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2017年09月30日

北海道 農業研修ツアー

北海道 農業研修ツアー

voice40_12p_10.jpg 9月4日(月)〜7日(木)の4日間、北海道農業研修ツアーを実施しました。
 この企画は、有限会社 社名渕みどり牧場 石丸さんの、「都会の大学生が北海道の農業についてどう思っているのか知りたい。まずは見てほしい」という一言から始まりました。
 今回参加したのは関東の大学生4名。期間中は農業実習や視察などを実施しました…が、学ぶだけではありません!ツアーの最後には「北海道(遠軽)で農業をする若者を増やすためにどうすればいいかを学生目線で提案する」という課題付き。さて、その成果とは?

1日目夕方石丸さんと顔合わせ、搾乳作業の見学
2日目

早朝酪農実習 [社名渕みどり牧場]
午前〜夕方視察 @株式会社はまほろ A有限会社ドリームヒル B有限会社森谷ファーム
若手社員の方々と交流会
3日目午前視察 Cノースプレインファーム株式会社
午後〜畑作実習(2か所) [高橋農園] [岡村農園]
4日目午前※引き続き、畑作実習。
視察 D有限会社井上牧場(*学生除く)
午後 遠軽町役場にて意見交換会、発表


酪農実習 〜経営と命を学ぶ〜

 ツアー最初の実習は社名渕みどり牧場さんでの酪農実習です。一般的に酪農の作業は、搾乳(多くの場合、早朝と夕方の2回)、牛の管理(病気のチェック、人工授精など)、エサやり、哺乳、掃除、牧草やデントコーン、サイレージ等の生産、機械整備、堆肥の処理、事務など多岐にわたりますが、今回私たちは朝4時半から始まる搾乳作業、掃除、エサやり、子牛の哺乳および体温測定を実習しました。
 初めて牛に触れる学生たち。石丸さんや社員さんにご指導いただきながら、慣れない手つきで作業を進めます。
 作業を通し印象的だったことは、この日で命を落とす牛の存在を知った学生の反応でした。その牛は病気のため立ち上がることができず治る見込みがないため、この日の午後に業者へ出すとのこと。石丸さんからは「投薬しているからお肉にはできなくて肉骨粉になるんだよ」と教えていただきました。家畜は愛玩動物ではなく経済動物。そのため経営判断が必要になるときがある。そう理解はしていても目の前に現実を突き付けられたことで、経営と命について改めて考えたようです。

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視察 〜様々な経営者から学ぶ〜

 「北海道には様々な農業がある。できるだけ多く知ってほしい」という石丸さんの意向のもと、はまほろさん(畑作・500ha以上)、ドリームヒルさん(酪農・経産牛 1700頭以上、育成牛540頭以上)、森谷ファームさん(畑作・35 ha)といった大規模経営体と、ノースプレインファームさん(酪農[有機JAS]・搾乳牛約60頭、育成牛約50頭)、井上牧場さん(酪農[ホルスタイン・ブラウンスイス・ガンジー]・合計約150頭)といった特徴的な酪農をされる経営体を視察しました。

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 規模も手法も異なる経営者の方々にお話を伺いましたが、共通の課題は、人材の確保・育成と、地域を守ること。学生の中には、視察のあと石丸さんから聞いた「北海道も本州もどの地域でも、大規模化や加工品製造への挑戦の裏にあるのは、地元を守りたいという共通した想いだよ」という言葉がとても印象に残ったそうです。

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社員の皆さんとの交流会

 社名渕みどり牧場に勤める20〜30代の若手社員さんのご厚意で交流会を開いてくださいました。社員さんの大半は非農家・異業種・北海道以外から就職された方々です。酪農を目指したきっかけ、仕事としての酪農、将来の目標など、ざっくばらんにお話をしました。

畑作実習 〜大規模経営を体感〜

 学生は2名ずつに分かれ、家族経営体の農家さん2軒(高橋農園さん・岡村農園さん)にお世話になりました。家族経営といえど、その規模は広大!例えば岡村農園さんでは、アスパラ・かぼちゃ・シソ・小麦・ビート等を生産されていますが、面積はのべ40 ha!お世話になった時はシソのはざかけシーズンで、約9haから採れるシソを手作業ではざかけにしました。乾燥したあとは回収し蒸留をしてシソ油を採るとのこと。「ニッチな産業だから機械化が進まなくて全て手作業になる」というお話は衝撃的でした…!

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発表

 最後は、遠軽町役場の方も加え「北海道(遠軽)で農業をする若者を増やすためにどうすればいいか」を発表しました。学生たちの提案に真剣に耳を傾ける役場の方々。それというのも、現地ではこれから農家・役場・JAなどで構成される「担い手協議会」が立ち上がる予定で、その活動の参考にもしたいとのこと。そのため提案内容の記載は控えますが、 一つでも実現できるよう私たちもご協力できればと思います!

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北海道農業研修ツアーを通して…

● 和田 達典 [東京農業大学1年]
voice40_12p_06.jpg 今回のツアーでは北海道特有の農業について、地域の方々やほかの参加者から、知識や経験、農業への考え方、農業を取りまく問題への意見を聞きたいと思っていました。そして4日間を通し、成功談や失敗談、農業への心意気、経営者のまだまだ続く目標、従業員として働いている方々の夢や野望など、さまざまな立場のさまざまな意見を伺い、考えさせられるものがありました。
 酪農・畑作実習も大変勉強になりました。自分が知らない特色のある経営や生産を行っている農業に出会える機会があればもっと積極的に参加したいと思いましたし、北海道農業への関心が高まりました。

● 井上 息吹 [東京農業大学2年]
voice40_12p_07.jpg 当初、北海道ならではの大規模農業での実習や、法人化、6次産業化で成功されている経営者の想いや道のりなどを伺いたいと思っていましたが、期待していた以上の体験やお話を伺うことができ、とても有意義なツアーとなりました。社名渕みどり牧場さんでは初めて酪農実習をしましたが動物と仕事をする難しさや楽しさを教えていただきました。なにより全てを通し大規模農業のインパクトは大きく、本州と北海道の農家さんの農業の価値観の違いも面白く、「本州ではできない農業が多い」と思ったことが素直な感想です。その中で共通の問題として人手不足があげられていたことが印象深かったです。

● 堀内 優花 [宇都宮大学3年]
voice40_12p_08.jpg ツアーに参加し、農業に関心のある学生であれば一度は北海道の農業を見る機会を持つ方が良いと思いました。以前から北海道の農業は大規模経営のイメージがありましたが、@大規模化になるほど投資の範囲も広がり土地や資金のやり繰りが一層大変になるという経営側の苦労に気づけたり、A機械化が進む中でも手作業でしか成り立たない工程がまだまだ沢山あることを大規模経営が主流の北海道で実感できたことは大きな学びになりました。大規模経営の現状を知り、10年後の農業経営を考える際、簡単に「大規模経営で機械化」ということを口にしなくなるなぁと思いました。

● 柳田 晋作 [千葉大学4年]
voice40_12p_09.jpg 実家は熊本県の柑橘農家です。中山間地域のため効率化が難しい地元の農業と北海道の農業は別物だと思っていました。もちろん規模や考え方は違いましたが、後継者や繁忙期の人手の確保、地域の人口減少と生産量の低下など農業が抱える課題や、それに対する農業者の想いは全国共通だと感じました。私の将来の目標は「地元の農業を持続的に発展させること」です。人材の確保や資金調達など多くの課題がありますが、今回の研修から多くのヒントをいただきました。
 この出会いに感謝し、日本の農業を盛り上げていくために、これからももっと勉強していきたいという意欲が強くなりました。

公式サイト

・遠軽町 ⇒ http://engaru.jp/
・(有)社名渕みどり牧場 ⇒ http://www.sangyo.net/job/detail/4842
・(株)はまほろ ⇒ http://www.hamahoro.jp/
・(有)ドリームヒル ⇒ https://www.dreamhill.co.jp/
・(有)森谷ファーム ⇒ http://moriya-farm.com/
・ノースプレインファーム(株) ⇒ http://northplainfarm.co.jp/wp/
・岡村農園 ⇒ http://okamurafarm.main.jp/index.html
・(有)井上牧場 ⇒ https://www.inouemilkfarm.com/

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」40号/2017年秋号より転載)



※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
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地域社会を育む、お酢屋の挑戦 【レポーター:岩切啓太郎君】

日本農業経営大学校 学生レポート

voice40_11p_01.jpg このコーナーでは、日本農業経営大学校の学生さんがレポーターとなり、様々な農業現場を発信します。今回のレポーターは、2年生の岩切啓太郎君(左)。地域に根付いた企業モデルを知るべく、株式会社飯尾醸造の5代目当主・飯尾彰浩社長(右)にお話を伺いました。

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」40号/2017年秋号より転載)

地域社会を育む、お酢屋の挑戦

 日本農業経営大学校の岩切啓太郎です。今回は、私が志す農業と日本が抱えている問題や課題をもとに、地域に根付いた企業モデルに取材をしました。取材先に選んだのは、京都府宮津市にある(株)飯尾醸造です。5代目当主、飯尾彰浩社長が取材に応じてくださいました。今回の取材は、今後一農業者として参入する私にとって、多くのヒントや現状を知る機会となりました。

● 創業124年の歴史と価値創造

 同社の創業は明治26年、今年で124年目になります。日本三景に指定されている天橋立で有名な宮津市は、山と海に囲まれ、人口僅か1万8千人の風情漂う田舎町です。その町の中心部から少し離れた海沿いに同社があります。道路沿いの看板に掲げられた富士山のマークと「富士酢」の文字が通行者の目を留め、蔵の外にまでお酢のまろやかないい香りが感じられます。
  
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(写真左)地域の風景。奥には海も見える。/(右)お酢のパッケージ

 飯尾醸造は、お米の生産からお酢造りまで全て自社で手掛けている、日本で唯一のお酢屋です。具体的には、お酢の原料となる無農薬のお米を作り、収穫したお米を元にお酒を仕込み、日本古来の製法で2年間という年月をかけてお酢を造ります。ここまでして素材や製法に「こだわり」を持つのは、大きな理由があります。戦後、日本が当たり前のように使いだした農薬。当時、農家にとっては重労働からの開放と生産性の飛躍的向上が図られ、効率よく日本を食料難から救った画期的な道具であったと思われます。しかしながら、農薬の使用による人体や環境への影響について心配される中で声を上げたのが、3代目当主でした。「無農薬」という言葉が理解されにくい時代でもあり協力者を探しだすのは非常に苦労されたようですが、昭和39年から、宮津市のとある集落と共に作った無農薬のお米を原料とし、お酢造りに取り組まれました。

 その想いや技術を受け継いだ4代目・5代目は、更なる挑戦として様々な商品展開や事業展開をされていきました。それは「地元の方々の活躍できる場の提供」という意味もなしています。地域にバリューチェーン・サプライチェーンの可視化がなされていることは、最大の安心と信頼を生むことにもなります。飯尾醸造は地元の生産者と消費者の人と人との距離感と、人が生きていく上で大切な食と農の距離感を常に意識されています。「関わり合う全てが身近な存在であって、対等な立場で認め合う」という社長の言葉からも、お金では計り知れない価値創造を未来にも受け継ぐという強い意思を感じました。

● 今後の挑戦

 2017年7月、お酢屋では例を見ない、夜のみの営業のイタリアンレストラン「acEto」を地元・宮津市に開店されました。飯尾醸造でつくられたお酢を使用し、地元の若狭湾で獲れた新鮮な魚と地場野菜を使ったコース料理が提供されます。また、近々、古民家と蔵を改装した建屋の中で、鮨屋も開業される予定です。飲食店を開業する理由は、「今まで以上に広い範囲で地域社会に潤いをもたらすため」とお聞きました。

 そして2025年には、「京都府の丹後を日本のサンセバスチャン(スペインで最も著名な観光地のひとつ)にする」との目標を掲げられています。その中で、シェフや鮨職人を育成する場の提供や、地元離れした若者がUターンしたくなるほどの魅力ある町へと生まれ変わる仕組み作りをしています。1次産業〜3次産業まで多くの需要が生まれ、仕事・雇用の増加や生活の豊かさなど、相乗効果を生みながら丹後地域を盛り上げることにも繋がります。進化し続ける飯尾醸造の勇姿ある行動は、周りが賛同するほどの想いの強さと協力者との信頼関係があっての挑戦であると思います。

公式サイト

株式会社 飯尾醸造 ⇒ https://www.iio-jozo.co.jp/
日本農業経営大学校 ⇒ https://jaiam.afj.or.jp/



※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
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農家が役立つ情報を、農家視点で毎月発信! 【農山漁村文化協会(農文協)】

一般社団法人農山漁村文化協会 山下さん

voice40_9p_01.jpg雑誌「現代農業」をはじめ様々な農業関連の書籍を制作・発行している一般社団法人 農山漁村文化協会(以下、農文協)。今回は「現代農業」の編集部で働く山下快さん(右写真)に、具体的な仕事内容や農家さんと関わり方についてお話を伺いました。

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」40号/2017年秋号より転載)

農家が役立つ情報を、農家視点で毎月発信!

―月刊「現代農業」には農家さんが導入しやすい農業技術や最新の農業事情などが掲載されていますが、毎号どのように制作されているのですか?
 巻頭特集は編集部全員で取組み、ほかのコーナーは各々の担当者が企画や取材、農家への執筆依頼、等をします。
 例えば巻頭特集は、2月号は「品種」、6月号は「防除」、10月号は「土と肥料」と決まっていますが、それ以外は「夏の石灰欠乏に挑む」「地温アップ」「農家のイベント」など、その季節に合わせた内容を軸に「農家に役立つ情報は何か」を考え企画を出し合い、意見が合致すれば採用されます。各コーナーは、稲作、野菜と花、果樹、畜産などに分かれるのですが、僕は9月号から地域経営の担当になったので、TPPや農政、集落営農、地域づくり等を中心に扱います。
 生産技術に関しては、農家が読んで再現できる話を紹介しています。例えば、「堆肥の出来上がりが水分含量60%」と聞いて具体的なイメージができますか?

―いや…難しいですね。
 ではそれが、「ぎゅっと握ったときにボタボタと落ちない程度で、手を開くと固まりになっていて、なおかつ指で押すとポロポロと崩れるくらいの水分量」と書かれていたらどうですか?

―イメージできます!
 そうだよね。こんなふうに現場で役立つ情報が書かれているのが「現代農業」なんです。余談ですが、堆肥の話は僕が大学を休学して1年間カンボジアのNGOで農業支援をしていたときに現地にあった農業書の中で「本当に役立つ情報だ!」と感動した時の話です。農文協を知ったのもその時で、入社を希望しました。

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△6月号(5月1日発行)の表紙は、「アブラムシ(害虫)と、それを狙うテントウムシの幼虫(益虫)」という構図。細かいこだわりが伺えます。

―そうなのですね!入社されてからずっと編集部にいらっしゃるのですか?
 いえ、最初は営業でした。まず当社に入社すると、最低1年間は「現代農業」の売込みをします。全国各地、1軒1軒農家を訪ねて、本を紹介したり「最近どうですか?」「どんな記事が面白かったですか?」などと聞いて回ります。そこから「最近こんな技術を試してみた」「こんな課題がある」といった情報を収集し、農家に役立つ情報があれば調査や取材等をして記事にします。
 ただ、400ページを超える「現代農業」を編集部9名で回すのはなかなか難しいので、半分くらいは農家に記事を書いてもらっています。

―それが最初に仰っていた「農家への執筆依頼」ですか?
 そうです。農家が書く記事は、日々現場でやっていることや考えているなので面白いんです!時には記事を読んだ農家から「あの農家の方がもっと収量上げているぞ」とか「こういう技術があるけど知っているか?」というように、農家が農家を紹介したり、売込みにくるパターンもあります。こんな風に「いいことを発見すればみんなに知らせたい」と考えるのは農家の美徳の一つだと思います。

―農家さん向けの情報を農家さんが書くというのも面白いですね!お話を伺い御社の事業はメディアを通した「農業の縁の下の力持ち」だと感じたのですが、ご自身ではどう思われますか?
 うーん…、あまりその意識はないですね。というのが、僕らは生産技術があるわけでも研究をしているわけでもなく、農家がやっていることを紹介しているに過ぎないので。「『現代農業』は農家が作っている雑誌で我々はそのお手伝いをしている」、そういう感覚です。
 大事にしていることは、農家と想いは 一緒だということ。農業や地域の課題を共に考え、農家にとって本当に役立つ情報を出していく、その積み重ねですね。

―山下さんの制作にかける熱い想いをすごく感じました!最後に、学生に一言お願いします。
 本を読んだり基礎的な勉強をして知識を貯めておくと良いと思います。会社に入ると腰を据えて学ぶ時間を作るのがなかなか難しいんですよね。もちろん農家から学ぶことも多いのですが、知識がないとレベルを下げてお話をされるので本質が聞けないという事態も発生してしまいます。だからこそ、学生時代の積み重ねは大切。後々じんわり効いてくる、まさに元肥みたいなものですよ。

公式サイト

一般社団法人 農山漁村文化協会(農文協)
⇒ http://www.ruralnet.or.jp/




※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
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新たな物流の構築で、農家の所得向上へ! 【株式会社 農業総合研究所】

株式会社 農業総合研究所 (本社:和歌山県)

voice40_8p_01.jpg農家さんの「顔の見える形」を目指し、新しい農産物流通のプラットフォームを構築された株式会社 農業総合研究所。昨年6月には東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たすなど農業界に新しい風を吹き込む同社ですが、現場ではどのような取組みをされているのでしょうか?今回は、集荷支援課チームマネー ジャー山田啓道さん(右)と店舗支援担当の川又光季さん(左)にお話を伺いました。

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」40号/2017年秋号より転載)

新たな物流の構築で、農家の所得向上へ!

―御社の概要を教えてください。
山田さん:
 弊社は平成19年に設立された農産物流通の会社です。代表の及川がキュウリ農家や青果店の経営をする中で「農業には流通改革が必要だ」と感じ弊社を設立し、生産と販売の双方をつなぐ新しい仕組みを構築しました。
 メインは農家の直売所事業。スーパーマーケット内に産直コーナーを作り野菜・果物を販売しています。現在、全国69か所に集荷場があり約1,000店舗のスーパーに出荷しています。農家数は約6,800名。農家さんは、袋詰めをして販売できる状態にした農産物を集荷場に持ち込み、バーコードを発券して一枚一枚商品に貼っていきます。それらを弊社スタッフがトラックに積み込み物流センターへ持ち込み、そこからは各スーパーのトラックが店舗に配送します。原則、農家さんが出荷した翌朝には各店舗に届く形になっているので、既存の物流構造よりも新鮮な状態で販売することができます。

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△集荷場でシールを貼る農家さん

―出荷して販売する形は市場出荷とあまり変わらないと思うのですが、大きな違いは何でしょうか?
山田さん:
 大きくは2点あります。1つは農家さん自らが農産物の値段と販売先を決められる点です。弊社ではその日の販売状況や各店舗の売行きを見られるシステムがあり、その情報を元に農家さんが値段と販売先を決めていきます。また、適切な価格や販路をアドバイスすることも集荷場担当者の重要な役割の一つです。
 もう1つは、委託販売を基本としているので、店頭で農産物が売れて初めて利益になる点です。売上の状況がわかることやお客様からの評価は農家さんのモチベーションアップにも繋がります。そのため、販売先の店舗を巡回し、適切な管理ができていない売り場は改善指導をしたり、商品そのものや値段が原因で売れない場合は集荷場にフィードバックをして農家さんへ改善を促していくことも店舗担当者の重要な役割の一つです。

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△スーパー内の売場の様子

―安いものだけが売れてしまうということは無いのでしょうか?
川又さん:
 もちろん価格も影響しますが、バーコードには品名と値段のほか農家さんの名前と産地も書いているので、「〇〇さんの作った野菜が好きだから買う」というお客様もいらっしゃいます。過去には農家さんにお手紙を書いてくださったお客様もいらっしゃいましたよ。

―そうなのですね!お話を伺い「顔の見える形」を構築する難しさと重要性を感じました。ところで、お仕事をする中で大事にされていることはありますか?
山田さん:
 農家さんと話をし、野菜が売れるまでをコーディネートしていくことです。なにより、農家さんと一緒になって取組むことを大事にしています。だからこそ、野菜が売れたときは農家さんと一緒に喜び合えますし、やりがいも感じます。

―ご苦労もありますか?
川又さん:
 農産物は天候や気候に左右されるため収穫量にバラつきが出ますが、店舗からは毎回同じ量が求められます。そこのギャップで苦労することがあります。ただ、それ以上に嬉しいことも沢山ありますよ。例えば、店舗にいるとお客様の声をよく聞きますが、その声が農家さんに伝わったときは嬉しいですね。

― 最後に、学生に一言お願いします!
川又さん:
 「農業に貢献」というと生産にスポットが当たりがちですが、販売や流通でも貢献できることを弊社に入り感じました。広い視野で農業界を見てもらえると良いなと思います。
山田さん:
 農業は天気に左右されるなど弊害も多く、すごく難しい職業だと思います。ただ、難しいからこそ、やりがいも大きいと思います。一緒に農業界を盛り上げましょう。

公式サイト

株式会社 農業総合研究所
⇒ http://www.nousouken.co.jp/




※記載情報は取材当時のものです。
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農業の「当たり前」を作り続ける 【株式会社 東海化成】

「農業の「当たり前」を作り続ける」 株式会社東海化成

voice40_7p_01.jpg美濃の地で50年近く、プラスチック製育苗鉢(以降ポットと表記)を作り続ける株式会社東海化成。ポットは、言わずと知れた農業の頼れる資材のひとつです。今回は代表取締役社長・景山昌治さん(左写真)に、ポットにかける想いを伺いました。
*景山社長が手にしているのは白いポット。手前に積まれているのはカラフルなカラーポット。

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」40号/2017年秋号より転載)

農業の「当たり前」を作り続ける

―御社について教えてください。
 弊社はポットの製造・販売を中心にした農業資材の会社です。創業の地であるここ美濃地域はかつて紙漉きが盛んで、弊社も創業当時は紙に関する事業を展開していましが、高度経済成長で紙漉き産業が衰退しました。弊社では1968年にポットの製造・販売に転換しましたが、職を失った地元の紙漉き職人方にポット製造を依頼したところ、彼らのものづくりに対する誠実さに助けられて企業としても成長しました。その後、高齢化等で働き手が少なくなったため1995年に中国へ進出。現在、製品の9割は中国工場で製造していますが、ノウハウや原料は全て日本で準備しています。

―ポットといえば黒色の印象ですが、御社はカラー展開をされていますね。
 「野菜苗の品種の見分けがつくように色を変えられないか」というお客様からの要望に応えていていくうちに、どんどん増えていきました。カラーポットは全部で50色近くあると思います。
 弊社は中間業者を通さず、実際に商品を扱う種苗会社などのお客様に直接売りに行く独自の販売網を事業開始当初に作り上げるなど、営業に力を入れていることも特色の一つです。お客様の要望が直接弊社に届くので、それらを大事にしながらなんとか形にしようと、商品開発に取り組んでいます。

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△試作品や一部製品は国内工場で製造。

―農業の現場を支える事業を展開する中で、苦労されることはありますか?
 たくさんありますが、何より一番は品質を維持することです。例えば、重ねたポットを取り外す際、引っかからないでパラパラっとすぐに離れないとだめなんですが、この調整がなかなか大変で…。弊社のポットは、他社がプラスチック製品を作る際に出る余りの部分を再生原料として使っていますが、硬さが異なるなど原料の品質にバラつきがあるので、それらを調整し均一な商品を製造していきます。ここにも技術が必要なんです。農業の作業性に響く大事な部分なので、やはり品質面はしっかり押さえる必要があります。これはこれで深い部分があるんですよ。

―普段何気なく使っているポットにそんな背景があるとは思いませんでした…。
 農業者からすると当たり前すぎて、空気みたいな存在ですよね(笑)。

―確かに、ポットの存在は重要ですが、あるのが当たり前という感覚でした。
 当たり前のものを作り続けるなかでもお客様の要望に合わせると様々な展開ができるんです。カラーポットもそうですが、ポットの穴もオーダーに合わせて開けられますし、浅いもの・深いもの、小さいもの・大きいもの、プリント技術を活かしてお客様オリジナルデザインのポットを製造する、など。開発・製造に携わる従業員たちも農業・園芸・緑化の分野で幅広く使われているところを見て「非常に大事なところで活躍する商品を作っているんだ」と感じていると思います。

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△ 可愛いデザインのポット。オリジナルデザインは1万ポットから製造可能。

―今後はどのような展開をお考えですか?
 お客様との関係の中で、新しい需要と生産方法を早く掴み、それに合わせた商品の開発をしていくことが大事だと考えています。
 加えて今の課題は、ほとんどの製品を中国で製造していることです。海外の工場は、今後は現地の市場向けの商品を開発・製造するという道はあるかと思いますが、もはや海外で製造して日本に持ってくる時代ではないと感じています。これからは海外に頼らなくていい、地元で強い生産力を持った工場を作っていきたいと考えています。

―最後に、学生に一言お願いします!
 ポットに限らず農業資材は非常に地味な商品です。また、農業者の高齢化や、植物工場などポットを必要としない農業の登場で業界の元気もなくなってきていると感じています。しかしポットは、食・心の癒し・環境などこれからの日本社会が見つめ直さなければならない非常に大事なところで幅広く活躍する資材です。若者が注目してくれるのは本当に希望の星のようなもの!社会で活躍する商品を一緒に作っていきましょう!

公式サイト

株式会社 東海化成
⇒ http://www.tokai-kasei.co.jp/




※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
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