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2016年06月30日

製造業のノウハウで農作業を効率化!【日産自動車株式会社】

日産自動車株式会社

 日本経済の屋台骨を支える自動車製造業。各社が今まで培った様々なモノづくりのノウハウを社会貢献として役立てようとする取り組みがあります。
 その中で、農業生産に着目してコンサルティングビジネスを行う日産自動車株式会社。具体的な取り組み、並びに他産業から見た農業界の印象等について、IPプロモーション部 日産コンサルティング 課長 後藤敦子さん(右写真)に伺いました。

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」35号/2016年夏号より転載)

製造業のノウハウで農作業を効率化!

―農業界に参入されたきっかけを教えてください。
 当社のノウハウを活用し世の中に貢献したい、それが一番強いですね。当部署は2011年に立ち上がり、これまで延べ300社以上のお客様にご利用いただいています。食品や金融、病院などあらゆる業種のコンサルティングをさせていただいている中で、東日本大震災で被災した魚の缶詰工場の再建をお手伝いしたことをきっかけに、「第一次産業でお役に立てる場があるのではないか」と考えるようになりました。
 その後、ある異業種交流会で住友化学の方とお話しをする機会がありました。住友化学さんは農業関連事業にも精通されていて、話が弾み、それがきっかけとなり本格的に農業界へ参入しました。具体的には、農林水産省が実施する「農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業」に、2014年から参画しています(※1参照)。

―具体的な取組内容を教えてください。
 当社では住友化学さんの農業法人「住化ファームおおいた」の生産コスト削減に取組んでいます。ビジネスにおいて利益を上げる方法は、売上を上げるか、生産コストを下げるか、そのどちらかですが、当事業では生産コストを下げる方、特にその大部分を占める労務費をいかに低減するかに重点を置きました。
 「労務費の低減」と聞くと「給料を下げるのか」と思われるかもしれませんが、そういうことではありません。人って、ムダを省いて作業が楽になると、結果として作業スピードが上がるんです。それにより、スタッフのモチベーションアップにつながったり、時間や気持ちに余裕ができるのでお客様ニーズに応えられる状況を作り出すこともできます。それらを実現するため、製造業のノウハウを活かし、効率化を図っています(※2参照)。なかなか大変ですけどね(笑)。

―コスト削減以外でも、専門領域が違うと大変なことも多いのではないですか?
 それは当然ありますよ。一番は「効率化」に対するイメージの差です。
 私は、農業コンサルの現場で農家さんから色々なことを教えていただいたり、年間40〜50件くらい農家さんを尋ねてお話をお聞きしたり、本を読んだりして知識を付けていますが、多くの農家さんは「手間暇かけて美味しいものを作りたい」という想いをお持ちです。それはすごく崇高な理念で私もリスペクトしているのですが、「効率化」と言うと、その部分を省かれるようなイメージを持たれるんですよね。なんというか、何十年もやってきたことを否定されるような・・・私が逆の立場でもそう感じると思います。
 しかし、製造業の世界では、品質向上と効率化は「OR」ではなく「AND」の関係です。当たり前の品質は担保しつつ、安いコストで提供する。その考え方もそうですが、この事業に取り入れている技術は、実は製造業の中ではすごく基本的なことが多いんですよね。

― よく「農業は遅れた産業だ」と揶揄されますが、やはりそう思われますか?
 それはないですね!産業によって注目する優先順位が違っただけだと思います。今は良い意味で様々な業界が農業界に参入していますし、お互いに色眼鏡で見ずにニュートラルになる方が、本当の意味でwin‐winになれると思います。
 それに、ビジネスって言っても、結局、人間同士じゃないですか。セオリーよりも想いが大事だと思うんです。加えて、コンサルの際は「共感力」がすごく大事。傾聴して、相手の気持ちをくみ取って、寄り添う。だからといって、同じ立場に立つと違う目線で見られなくなるので、離れた立場から見ることが重要です。
 なお、この事業の目標は、3年間で30%の生産コスト削減です。単純計算で年間10%の削減となりますが、2年間で20%削減できました。この数値目標が達成されたのは、一番は現場で働く皆さんがすごく頑張っているからなんです。今年度は当事業の最終年度。皆で一丸となり、残り10%の削減を目指します。

―これからの展望を教えてください!
 社会貢献で一番重要なことはサステナブル(持続可能)であること。だからこそ、ノウハウや手法を根付かすこと・広めることが、本当の意味で価値のあることだと思います。その一環として、現在、当事業で得たスキルを元に農業大学校向けのカリキュラム開発をしており、事業終了後もそれを広める予定です。今後も、農業コンサルを含め、「日産自動車だからできること」に取組みます。

(※1)農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業」

 平成26年度から始まった農林水産省の補助事業。事業の目的は下記の通り。
 「意欲ある農業法人と先端技術を有する経済界の企業等が連携して行う、低コスト生産技術体系の確立やICTを活用した効率的生産体系の構築、低コストの農業機械開発、農業経営における新しいビジネスモデルの開発などの先端モデル農業の確立に向けた取組を支援します。事業により得られた成果を地域に広く普及することで、日本農業全体の競争力強化を図ることが本事業のねらいです。」 (農林水産省「農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業」 http://www.maff.go.jp/j/keiei/keiei/sentan_model/sentan_model.html より引用)
 なお、この事業では、農業界と経済界がコンソーシアムを形成する等して、プロジェクトにかかる経費を明確化することが求められます。

(※2)農業×日産のモノづくり

 「農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業」に合わせ、農業界(農業法人)および経済界(住友化学、パナソニック、日産自動車)が連携し、「サンライズ先端農業コンソーシアム」を形成しています。
 このプロジェクトでは、カメレオンコード(パナソニック)の活用と、日産生産方式の応用による農業の「見える化」等による業務改善を通し、コスト削減や生産性向上を目指しています。事業は平成26年から平成28年までの3年計画で進められています。
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実際の取組事例について、後藤さんにお聞きしました。

     *   *   *

 トマト生産では、葉かき・芽かきといった管理作業や、収穫後の選果、パッキングなど様々な作業が含まれますが、改善例の一つに、「カラクリ技術」を取り入れた作業の効率化があります。
 トマトを収穫して集荷するまで、以前は、収穫したトマトでコンテナがいっぱいになったらその場に置き、新しいコンテナで収穫の続きをし、いっぱいになったらその場に置きを繰り返し、その後、ハウス内に点々と置かれた収穫後のコンテナを持ち上げ、運び出していました。収穫後のコンテナは1つで14 kg程あり、それを1日に20回近く繰り返すので、総重量だと約300kgを運ぶことになります。しかも、60〜70歳のパートさんが、真夏30度以上のハウスの中で。これは辛いですよね。
 そこで、「この取り置き方式をゼロにしよう」と提案しました。その方法に、工場で活用されている「カラクリ技術」を取り入れました。これは、電気などの駆動原を使わず、歯車や自重を使って動かす技術ですが、当社社員が近くのホームセンター等へ行き、材料を調達して、その場で自作しました。これにより取り置きがゼロになりました。
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 この作業が楽になった分、疲れも減ったので、その後の選果作業やパッキング作業も早くなりました。作業が早くなりパートさんの従来の作業時間が短くなった分、社員さんがしていた農作業をパートさんに回すことができ、社員さんは本来の仕事であるマネジメント業務の時間を増やすことができました。この効率化により、労務費を200万円近く低減できました。




※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
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posted by agri-map at 00:00| Comment(0) | コンサル
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