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2015年09月30日

漢方と農業の関わり

漢方と農業の関わり

 一見、農業とは関係がないと思える事業の中にも、栽培の普及による耕作放棄地の解消や6次産業化といった農業界の活性化に繋がるヒントがたくさんあると思います。そこで今回は、甘草を利用したまちづくりで市の産業を盛り上げている事例をご紹介いたします!

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」32号/2015年秋号より転載)

漢方とは?

 漢方とは中国で発達し日本に渡って独自の発展をしてきた伝統医学です。病気を身体全体の不調和ととらえ正しく整えることが目的である漢方薬は、原料として動植物由来のものや天然物由来のものが用いられます。

身近な存在、「甘草」

 中でも使用頻度が最も高い原料が「甘草」です。漢方薬はもちろん、甘味料にも使用されるほど身近な原料なので、皆さんも知らず知らずのうちに食べたことがあるのではないかと思います。この甘草は現在、ほぼ100%を中国から輸入しています。

[甘草]
 マメ科カンゾウ属。高さ50cmほどの多年草で、根や根茎を乾燥したものを利用します。「ウラルカンゾウ」と「スペインカンゾウ」が有名で、前者のうちグリチルリチン酸を2.5%以上含むものは医薬品(漢方など)として使用することが薬事法で認められています。

 しかし、中国国内をはじめ世界的な需要増加や輸出制限等の影響で値上がりが続いています。また、中国からの輸入もいつ中止されるか分からない状況です。この現状から、日本での国産化の必要性が高まっており、様々な企業や自治体による国内栽培の動きが活発になってきています。

甘草の里づくり計画

 そこで今回は、この甘草に注目し、甘草を使った新たなまちづくりをされている山梨県甲州市にスポットを当てます。「甲州市 甘草の里づくり計画」事業を担当されている甲州市産業振興課商工担当の林正樹さん(右写真)にお話を伺いました。

―なぜ、甘草の栽培を始めたのですか?
 甲州市に古くからある「甘草屋敷」(右写真)を中心にしたまちづくり構想があり、その一環として取組んでいます。
 最近日本では漢方薬の原料となる植物を国内栽培化しようという動きが増えてきていますが、実は江戸時代にも同じような動きがありました。当時の甘草について記された「甲州甘草文書」と呼ばれる書物には甲州市の甘草屋敷近辺で育てられた甘草を幕府におさめていた記録も残されています。この歴史ある甘草屋敷に関する人的・知的・物的資源を「有効かつ積極的に使用し甲州市活性化に繋げよう」という方針で、この事業はスタートしました。

―甘草栽培は難しいのですか?
 正直、難しいです。強い作物なので自生はできますが、それを商業用に生産するには多くの課題があります。
 例えば、当市では2年前より甘草屋敷および協力農家数軒で試験栽培をしていますが、再生産価格での栽培方法の確立が難しく、今もそれに向けた試験栽培を行っています。具体的には、畝の上にマルチを敷いた圃場に、底に穴が空いたポットに植えられた甘草をそのまま移植して2年間栽培します。甘草は根を加工(裁断や粉末など)して使うので途中で切れても問題ありませんから、最後は重機を使って一気に収穫します。ただ、現状では採算が合いません。栽培には人件費や資材費、収穫のための重機レンタル費(オペレーター込み)など様々なコストがかかります。一方で、甘草の取引価格は1キロ1000円程度と仮定すると、甘草10本で約1キロになり、去年は約50キロ収穫できたので5万円…これでは赤字になってしまいます。

 他にも、今年はマルチで失敗しました。実は今までは、協力関係にある新日本製薬さんの指導で白マルチを使ってきたのですが、白マルチは黒マルチに比べ2倍ほど高いんです。「出来るだけコスト削減したい」と思い、今年は黒マルチに変えたのですが、黒マルチは熱を吸収しやすく、それに触れた甘草の葉が焼けてしまいました。
 課題を改善するために挑戦と失敗を繰り返す日々ですが、模索することも一つの楽しみですので、試行錯誤しながら取り組んでいきたいと思います。

―今後の目標を教えてください!
 生産という「入口」から、販売という「出口」までのサイクルをつくり、産業化としての可能性を高めたいと考えています。そのためにも、収穫した甘草の根をどういう風に加工するのか、加工したもので何を作るのか、その2点を重点的に取組みたいと考えています。将来的には「甘草屋敷」を中心に農業・歴史・商品開発・観光の四つのセクションで事業を展開していくことを目標にしています。

―最後に、初年度より同事業に携わってこられた林さんの想いをお聞かせください!
 甘草は将来性があり夢は広がるのですが、やはり成功までの道のりは遠いですね。大変ではありますが、仕事としてはとてもやりがいを感じます。誰もやったことがない。自由に展開できる。様々な企業等との交渉を通し、多くの人と繋がりができる。私は公務員ですが、営業職のような働き方ができて面白いですね。
 それに甘草は、漢方薬や甘味料、入浴剤など様々な形に変化します。今は使われていない葉っぱも使えるようになれば、利用価値もより広がると思います。多くの可能性を秘めているからこそ、いろいろな観点から商品価値を見出して、事業を成功させたいと思います。




※記載情報は取材当時のものです。
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posted by agri-map at 00:00| Comment(0) | 様々な取り組み
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