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2017年03月30日

「新しいアイディアで新規就農者を育成する!」新潟県三条市

「県外の農業法人で研修を積んでから当市内で新規就農」という方法に取り組んでいる新潟県三条市。
この珍しい取組みを始めたきっかけは?三条市役所 経済部農林課 係長 渡辺哲也さんに、事業内容や農業者育成にかける想いなどを伺いました!
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」37号/2016年冬号より転載)

新しいアイディアで新規就農者を育成する!

37号_渡辺さん.jpg―多くの自治体では「県内で農業研修を積んで県内で就農」という就農支援策を取られていますが、なぜ貴市では「県外の農業法人」で研修を積むのでしょうか?

 三条市の農業で他の農業者が目指すべき一番星となる農業者を育成するために最適な方法だと考えたためです。
 ここ新潟県三条市は越後平野の真ん中にあり広大な農地を有しており、お米の生産を中心とした農業が行われてきました。一方で、「刃物等金属製品の加工が盛んなものづくりの町」でもあり、工業を中心とした仕事が多くあります。米の需要の落ち込みが続き農業者が転作対応をする中で兼業化が進んだことで、市内の農業者の80%以上は兼業農家という状況です。
 このことは、市内に農業者の安定的な就業先はあるものの経営として成り立つ農業は進んでいないということです。この状況を受け産業としての農業という原点に帰って考えた時に、「安定兼業≠ヘ国土保全や地域コミュニティの維持など重要な役割を果たしておりその維持は重要だが、農業だけでごはんを食べていける経営の育成が必要ではないか」という議論になりました。

 そこで、「農業だけでごはんの食べられる経営」の育成を進めよう、そのためにどうすれば良いのか、ということで先進農業者の事例調査を行ったところ「価格決定力」というキーワードを見つけました。
 この「価格決定力」とは、自ら生産する農産物を市場相場等に左右されずに自ら決めた価格で販売できる力ということです。その力をつけるためには「価格決定力」のある農業者から直接指導してもらうことが良いと考え、先進農業者の事例調査も踏まえ、茨城県で「小さくて強い農業」を展開する(株)久松農園さんと、長野県で大規模農業を展開する(有)トップリバーさんに、「価格決定力」のある「研修派遣先」としてお願いするに至りました。この取組を踏まえて育成された新規就農者が本市で営農を行うことで、市内の既存の農業者にもその営農手法などがおおいに波及していくことを期待しています。

37号_ 三条市チラシ.jpg―2社とも有名な農業法人ですね!ところで2社の作目は野菜ですが、野菜での新規就農を支援されているのですか?

 作目は稲作であってもかまわないと思っています。しかし、稲作や畜産は初期の設備投資にかなりお金がかかるなど新規就農者にはハードルが高いため、比較的設備投資がかからず稲作より少ない耕地で単位面積当たりの収益性を確保できる経営として野菜での研修に重点化することにしました。しかし「価格決定力」の確保とは、そのための生産技術の取得もさることながら、「価格決定力」を確保するための営業・販売技術をも備えることになり、このことが本市の取組の肝となっており、稲作においても十分に応用できると考えています。
 ただ、三条市は地理的に冬場は雪が積もるので、その間をどうするかという戦略を考える必要があります。必要な農業機械等の投資については県や国などの事業を活用しながら支援できればと思っています。

―最後に、学生に一言お願いします!

 農業は非常に魅力のある産業だと思います。農業をやるためにいろんな事を自分で考え、自分の裁量で経営を行い結果は全て自分に返ってくるのです。その意味で農業は最高の自由業だと思っています。また、農業はまだまだ開拓できる部分があり、例えば消費者のニッチでディープなニーズを開拓して新たな農産物の流通を構築するなど、やり方次第では大きく発展する可能性を持っています。
 ここ三条市は都心から新幹線でわずか2時間のところにありながら都市部と広大な自然が共存する「ほどよく田舎」なところです。「農業をしたい!」という方は、ぜひ三条市にも目を向けてほしいですね!

●事業の詳細 ⇒ http://www.city.sanjo.niigata.jp/nourin/page00260.html

「自立と自走」のために

 研修先の1つである「株式会社 久松農園」は、有機農業で年間50種類以上の野菜を生産し、個人や飲食店等への直接販売を軸にした農業経営をされています。
 代表の久松達央さんは、1998年に一般企業を退職後、1年間の農業研修を経て1999年に独立就農。今回は久松さんに、この事業に期待することなどを伺いました。

37号_ 久松さん.jpg● この事業で期待していることは?
 冬場の雪、中山間地という条件不利地域でも自立した農業経営が行えれば、地域の資源は守られます。人口減時代の日本の新しい農業のモデルをつくっていくこと、それを広く発信していくこと。

● 人材育成への想いを教えてください。
 おいしい野菜でお客様を喜ばせる、という価値を提供し続けるためには、当人がおいしい野菜をつくれるだけでは不十分。おいしい野菜をつくれる人をつくる、ことまでやってはじめて仕事と言えます。

● 農業を志す学生へ一言!
 好きな仕事でメシを食うキーワードは「自立と自走」。自立とは、信念を曲げずに生きられるだけの精神的経済的基盤を持ち続けること。自走とは己の力でPDCAを回して、やればやるほど経営が良くなっていく推進力を持つこと。一人ですべてをこなすことなど無理です。何をやるか、よりも誰とやるか、を真剣に考えてください。

【株式会社 久松農園】
住 所: 茨城県土浦市高岡
URL: http://hisamatsufarm.com




※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
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posted by agri-map at 13:36| Comment(0) | 公的機関・公務員
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