農業界地図ロゴ

2017年03月31日

【農業×海外】 世界の中の日本農業を考える!

秋澤さん.png「日本の農家として、自分にできることは何かを考えて続けています」
そう仰る秋澤さんは、学生時代にアフリカ、南米、東南アジア、アメリカと、未知の世界に果敢に飛び込んでいき、農業をはじめとした豊富な経験を通じてさまざまな価値観を培いました。
今回は、その経験や農業への想いと、「農業×海外」をテーマにお話を伺いました。

△あきさわ園 秋澤史隆さん(神奈川県小田原市/ミカン農家)

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」38号/2017年春号より転載)

世界の中の日本農業を考える! 〜海外での経験を通して〜

―なぜ海外へ行こうと思われたのですか?
 うちは300年続くみかん農家ですが、父がアメリカに行っていたり、ASEAN地域からの研修生を受け入れるなど外国の方と接することも多く、小さい頃から海外に行ってみたいと思っていました。
 大学は東京農業大学に通っていて、先輩から「海外移住研究部」を紹介されたのですが、そこの先輩たちの話が面白くて!加えて、国際協力について初めて知って衝撃を受けたんです。「わざわざ人のために働く、そういう生き方があるんだ。生きていく手段はいろいろあるんだ」と。そこで、「今しかできないことをしよう」と考えて、2年生の春休みに先輩を通じてセネガル(アフリカ)の村で約2か月農業をしていました。

―セネガルではどのようなことを経験しましたか?
 カタコトのフランス語とアラビア語とウォロフ語(現地部族の言語)でなんとか会話をしていましたが、いろんな人と話すことの大切さや楽しさを実感しました。「一人じゃ生きていけないんだ」とか、「1つの地域や1つの学校にいると、そこだけの視野になってしまうんだ」と感じました。
 あとは、経済格差を実感しましたね。がんばって水やりをして農産物を作っても一生村から出られない人がいる一方で、自分のように一ヶ月がんばって働けば地球の反対側まで行ける分の稼ぎができる国がある。大学に行ける貴重さも、海外へ行ったからこそ知りました。そこで、「日本人だからこそできることをするべきだ」と考えるようになったんです。
 またある時は、みんなでお祈りをして、ヤギや羊を解体して、お肉分け合って、感謝しながらいただく、という場面に遭遇しました。「命をつないでくれているんだ」と思うと同時に、「命を大切にすることが出来なくなってきている日本があるんじゃないか」と感じたんです。今の日本はお金を払えば何でも手に入る世の中だから、モノの価値をお金でしか測れなくなっているんじゃないかって。

voice38_あきさわ園さん(2).jpg

voice38_あきさわ園さん(3).jpg
△セネガルにて

―耳が痛いですね・・・。他にはどこに行かれましたか?
 3年生が終わってすぐに1年間休学して、南米に行きました。

―日本農業とはどう違いましたか?
 根本的に考え方が違いますね。向こうは経営・マネジメントだから。ブラジルでは4人の先輩たちが各々の農場の農場主をしていて、それぞれ10〜20人の従業員を雇っていました。従業員たちの家族も合わせると400人ぐらいになるので、1つの村ができるわけです。農業が地域に果たす役割は本当に大きいなと感じました。
 大学卒業後は、アメリカに2年間行きました。アメリカは自分で営業して自分で売っていくのが基本。普通の企業と変わらないですよ。あと、そのとき食べたドーナツが美味しかった!帰国後、そのドーナツ企業が日本に進出したので「商品開発を学びたい」と思いバイトをしていました。そこで思ったんです。ドーナツは1つ200円以上もするのに、なんで何十年もかけて樹をつくって一生懸命育てたミカンが1つ数十円なんだろうって。付加価値のつけ方についても考えさせられましたね。

voice38_あきさわ園さん(4).jpg
△ブラジルにて

―就農後は、どのような取り組みをされていますか?
 いろんな価値観を得た中で、「自分にしかできないことは何だろう」と考えた結果、「家業を継ごう」と思いました。「自分が農業をしなければ、代々続いてきたこのミカン山は誰が守るのだろう」と思って。
 今は「ほしい未来を創造する」というテーマで、受け継がれてきたものを活かしつつ新しい価値を創造しようと、食育活動や農業体験、イベント、商品開発など色々なことに取り組んでいます。あと、農業って本当はすべての人が関われる仕事だから、いろんな人を巻き込んでいくことが大事だと思っています。農業は命をつくる産業だから、「みんなで一緒に育てようよ」って、そういう農業を目指しています。

―最後に、学生に一言お願いします!
 本当に、今しかできないことをやった方がいい。学生ってなんでも挑戦するバカ者でいいんです。バカ者だからこそ、学生にしかできないことも多いんです。いろんな先生の話を聞きに行ったり、国際会議でもボランティアでも、NGOや国連でも、どんどん挑戦しないと、もったいないと思いますよ。

公式サイト

・あきさわ園 ⇒ http://www.natu-aki.com/



※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
インタビュー一覧へ戻る


posted by agri-map at 00:00| Comment(0) | 農業法人・農業者

「理想の酪農を求めて」岩谷牧場

小さい頃から「北海道で酪農したい!」という理想を追い求めて、新規就農に至ったご夫婦がいます。
今回は、岩谷牧場 岩谷さんご夫婦(北海道幕別町)にお話を伺いました。

岩谷ご夫婦.png
△智恵さん(左)と史人さん(右)

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」38号/2017年春号より転載)

理想の酪農を求めて

―岩谷牧場さんについて教えてください。

史人さん
 うちの牧場は全部で60頭ほど。作業は夫婦で分担しており、私は親牛担当で日々の搾乳や人工授精などを、妻は子牛を担当しています。

―従業員の方はいらっしゃいますか?

史人さん
 正規雇用はいませんが、酪農ヘルパーさんにお願いしたり、大学生がバイトや実習でよく来ます。特に学生さんには実際の作業をたくさん体験してほしいですね。

智恵さん
 小さな酪農家で体験するからこそ学べること・教えられることが沢山あると思います。除角やワクチネーションなども一緒にすることがありますが、「普通のバイトだと経験できないので勉強になった」と話す学生さんもいますよ。学生さんの将来の夢を聞くのも面白くて楽しみの一つです。

voice38_岩谷牧場さん(2).jpg

史人さん
 私自身、小さい頃から「北海道で酪農したい!」と思い、夢が叶って新規就農できました。その時から、この規模、このやり方の酪農が理想的でした。

―岩谷さんは新規就農者なのですか?

史人さん
史人さんと牛.png そうです。妻も私も出身は本州です。妻とは大学時代の同級生で、妻も将来は北海道に住み動物の仕事をすることに憧れていました。その後いろいろご縁をいただき、平成11年からこの場所で牧場を始めました。
 就農の際は「公社営農場リース事業」を活用しましたが、やはり資金面は大変でしたね。その事業は牛も施設も土地も全部含めて貸すというもので、総額1億円になりました。5年据え置きで返済していくのですが、牛と施設は減価償却が終わっているので、返済自体は6千万円くらいです。ただ、今の時代に同じ規模で新規就農しようと思うと、もっとかかると思います。
 あと、就農当時はトラクターもなくて実習先の方にお借りしていたのですが、牧草収穫が遅いのを見かねた近所の方々が手伝いに来てくれるなど、すごく助けていただきました。地域の方々にも本当に感謝しています。

―最後に、学生に一言お願いします!

智恵さん
 多くの学生さんは牛を扱うことに慣れていないので、牛は逃げるし、十分気を付けないとケガをする恐れもあります。でもそうしたことは、理屈ではなく経験を積んで覚えていくことなので、どんどん経験してほしいですね。

史人さん
 農業はやりがいのある仕事!それに、これからの地域や農業を作るのは「よそ者・バカ者・愚か者」だと思う。だからこそ、学生の間は色々なところで実習をして農業の価値を体感して、将来は農業を仕事にしてほしいですね。



※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
インタビュー一覧へ戻る


posted by agri-map at 00:00| Comment(0) | 農業法人・農業者

「農業現場でのIT活用。大切なのは人の育成!」有限会社 鍋八農産

トヨタ自動車の農業IT管理ツール「豊作計画」を導入し、効率的かつ安定した農業経営を実践する(有)鍋八農産。「ITを活用するのは人。一番大切なのは、社員の意識改革なんです」と仰る 八木社長に、「豊作計画」導入の経緯や活用状況について伺いました。

voice38_鍋八農産さん(1).jpg
△八木輝治社長(46)

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」38号/2017年春号より転載)

農業現場でのIT活用。大切なのは人の育成!

―まず、御社について教えてください。
 当社は稲作を中心にした農業法人です。作業委託や全面委託が多く、地域農業を維持する機能も担っていると言えます。販路はスーパーや中食・外食業者などで、ほぼ全量を自社で捌いています。そのほか、麦や大豆の生産、米を原料にした加工品販売、等もしています。

―トヨタ自動車(以下、トヨタ)と連携を始めたきっかけを教えてください。
 トヨタとはH23年から連携していますが、最初は愛知県稲作経営者会議 会長からの紹介でした。私は20歳(H3年)で家業である当社に就職しましたが、作業が非効率で毎日夜遅くまで働き、加えて休みがないという仕事形態が嫌でした。そのため、35歳(H18年)で経営権を得て社長になってからは「働き方を変えたい」と思っていました。その意識を持っていたことと、トヨタも当社に興味を持っていただいたことから連携が始まりました。当初はここまで劇的に改善するとは想像していませんでしたが(笑)。

―どのような点が変わりましたか?
 一番は、ムダを省くことで効率が上がったことです。トヨタ式に言うと「カイゼン」ですね。
 「豊作計画」でできることは、作業工程の作成・管理、報告書の自動作成、コスト算出などです。そこで必要となるのは日々のデータですが、その大半は社員各々が現場からスマートフォンに入力したデータです。例えば田んぼ作業には、代掻き、田植え、防除、水管理、稲刈りなどの作業がありますが、社員は各圃場で作業開始前と終了時にスマホに入力します。すると地図上に打たれたピンの色が自動的に変化し、「この田んぼでは○○の作業が終了した」ということが 一目瞭然で分かります。当社は田んぼが2000枚ほどあり、遠い圃場は事務所から20qも離れているので、各圃場の状況がリアルタイムに共有できるようになったのは大きな変革です。

―データ入力は社員さんがされますが、抵抗はありませんでしたか?
 最初の頃は「面倒くさい」とはっきり言われていましたね(笑)。スマホに慣れない社員もいましたし、現場へ行くとすぐに作業を始めたい≠ニいう気持ちになり入力せず作業を開始するというミスも多くありました。しかし、それだと正確なデータが取れません。そこで、社員全員を集めて、何のために「豊作計画」を導入しているのかをプレゼンしたり、実際に集積したデータを見せることで、意識付けをしました。「豊作計画」では 一反あたりの作業時間や、使った資材の原価なども表示できます。このような「見える化」により、作業効率のアップや資材等のムダが減っただけでなく、各々のモチベーション向上にも繋がりました。
 結局、いくらITを導入しても、現場で働いているのは人≠ナす。だからこそ一番大切なのは、社員の育成や意識改革なんです。そこが変わらなければ何も変わりません。
 それと、このシステムを作り上げるために、最初の約1年間はトヨタの担当者が当社に通い農業をしていました。「豊作計画」はまだ実証実験の段階ですが、トヨタも当社も本気で取り組んできたからこそ、得られた結果だと思います。

―現場ありきで進められた結果ですね!最後に、学生に一言お願いします。
 今までのやり方にこだわらず、新しい考えをどんどん出してほしいですね。経験やスキルは重要ですが、それがかえって邪魔をする場合もあり、経験者でないからこそ良いヒントを出せる場合もあります。当社社員は20〜30代の非農家出身者が多いのですが、彼らから学ぶことも多くありますよ。チャネルが多いほど農業にも活かせると思うので、学生のうちに様々な情報を得たり異業種との繋がりを作っておくと良いと思います。

voice38_鍋八農産さん(2).jpg voice38_鍋八農産さん(3).jpg
(左)デジタル化だけでなく、ホワイトボードなどを活用することで、アナログ面からもカイゼンを図っている。
(右)社員13名のうち、12名が20〜30代の非農家出身者。県外から就職した若者も多い。



※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
インタビュー一覧へ戻る


posted by agri-map at 00:00| Comment(0) | 農業法人・農業者