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2017年09月30日

農家が役立つ情報を、農家視点で毎月発信! 【農山漁村文化協会(農文協)】

一般社団法人農山漁村文化協会 山下さん

voice40_9p_01.jpg雑誌「現代農業」をはじめ様々な農業関連の書籍を制作・発行している一般社団法人 農山漁村文化協会(以下、農文協)。今回は「現代農業」の編集部で働く山下快さん(右写真)に、具体的な仕事内容や農家さんと関わり方についてお話を伺いました。

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」40号/2017年秋号より転載)

農家が役立つ情報を、農家視点で毎月発信!

―月刊「現代農業」には農家さんが導入しやすい農業技術や最新の農業事情などが掲載されていますが、毎号どのように制作されているのですか?
 巻頭特集は編集部全員で取組み、ほかのコーナーは各々の担当者が企画や取材、農家への執筆依頼、等をします。
 例えば巻頭特集は、2月号は「品種」、6月号は「防除」、10月号は「土と肥料」と決まっていますが、それ以外は「夏の石灰欠乏に挑む」「地温アップ」「農家のイベント」など、その季節に合わせた内容を軸に「農家に役立つ情報は何か」を考え企画を出し合い、意見が合致すれば採用されます。各コーナーは、稲作、野菜と花、果樹、畜産などに分かれるのですが、僕は9月号から地域経営の担当になったので、TPPや農政、集落営農、地域づくり等を中心に扱います。
 生産技術に関しては、農家が読んで再現できる話を紹介しています。例えば、「堆肥の出来上がりが水分含量60%」と聞いて具体的なイメージができますか?

―いや…難しいですね。
 ではそれが、「ぎゅっと握ったときにボタボタと落ちない程度で、手を開くと固まりになっていて、なおかつ指で押すとポロポロと崩れるくらいの水分量」と書かれていたらどうですか?

―イメージできます!
 そうだよね。こんなふうに現場で役立つ情報が書かれているのが「現代農業」なんです。余談ですが、堆肥の話は僕が大学を休学して1年間カンボジアのNGOで農業支援をしていたときに現地にあった農業書の中で「本当に役立つ情報だ!」と感動した時の話です。農文協を知ったのもその時で、入社を希望しました。

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△6月号(5月1日発行)の表紙は、「アブラムシ(害虫)と、それを狙うテントウムシの幼虫(益虫)」という構図。細かいこだわりが伺えます。

―そうなのですね!入社されてからずっと編集部にいらっしゃるのですか?
 いえ、最初は営業でした。まず当社に入社すると、最低1年間は「現代農業」の売込みをします。全国各地、1軒1軒農家を訪ねて、本を紹介したり「最近どうですか?」「どんな記事が面白かったですか?」などと聞いて回ります。そこから「最近こんな技術を試してみた」「こんな課題がある」といった情報を収集し、農家に役立つ情報があれば調査や取材等をして記事にします。
 ただ、400ページを超える「現代農業」を編集部9名で回すのはなかなか難しいので、半分くらいは農家に記事を書いてもらっています。

―それが最初に仰っていた「農家への執筆依頼」ですか?
 そうです。農家が書く記事は、日々現場でやっていることや考えているなので面白いんです!時には記事を読んだ農家から「あの農家の方がもっと収量上げているぞ」とか「こういう技術があるけど知っているか?」というように、農家が農家を紹介したり、売込みにくるパターンもあります。こんな風に「いいことを発見すればみんなに知らせたい」と考えるのは農家の美徳の一つだと思います。

―農家さん向けの情報を農家さんが書くというのも面白いですね!お話を伺い御社の事業はメディアを通した「農業の縁の下の力持ち」だと感じたのですが、ご自身ではどう思われますか?
 うーん…、あまりその意識はないですね。というのが、僕らは生産技術があるわけでも研究をしているわけでもなく、農家がやっていることを紹介しているに過ぎないので。「『現代農業』は農家が作っている雑誌で我々はそのお手伝いをしている」、そういう感覚です。
 大事にしていることは、農家と想いは 一緒だということ。農業や地域の課題を共に考え、農家にとって本当に役立つ情報を出していく、その積み重ねですね。

―山下さんの制作にかける熱い想いをすごく感じました!最後に、学生に一言お願いします。
 本を読んだり基礎的な勉強をして知識を貯めておくと良いと思います。会社に入ると腰を据えて学ぶ時間を作るのがなかなか難しいんですよね。もちろん農家から学ぶことも多いのですが、知識がないとレベルを下げてお話をされるので本質が聞けないという事態も発生してしまいます。だからこそ、学生時代の積み重ねは大切。後々じんわり効いてくる、まさに元肥みたいなものですよ。

公式サイト

一般社団法人 農山漁村文化協会(農文協)
⇒ http://www.ruralnet.or.jp/




※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
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2017年08月30日

廃棄野菜がクレヨンに!?デザインと農業の融合

“廃棄野菜からクレヨンができる!?”
これまで農業について学んできた中でも初めて聞いた話に興味を持った私は、“おやさいクレヨン”についてもっと知りたいと思い、製造・販売されている mizuiro株式会社 代表 木村尚子さんに、起業のきっかけから“おやさいクレヨン”の製作過程、今後の目標についてお話を伺いました。
(取材:2017/7/6、記者・堀内|掲載:2017/8/30)


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―廃棄野菜というと、形が曲がっている、大きさが小さすぎるなど、規格外の野菜をイメージしますが、実際にはどういったものを使用されているのですか?

 原料の多くは、加工場から出る野菜クズを使用しています。例えば、原料の一つに長芋がありますが、青森県は長芋の産地であり、とろろ製造等の加工場はほぼ一年中稼働しています。そこでは皮の部分が毎日約1トンも出るそうなのですが、通常それらは産業廃棄物として費用をかけて処分しています。そのようにお金をかけて廃棄される皮をパウダーにしてクレヨンの原料にしています。
 長芋以外にも、ごぼう茶の出がらしや、カシスジュースの絞りかすなども使用してます。実は青森県はカシスの生産量が日本一なんですよ!

―そうなのですね!青森県はリンゴのイメージが強いのですが、カシスも日本一とは知りませんでした…。加えて、原料となる廃棄野菜は農場から出るものを使用されていると思っていましたので驚きました。

 最初は県の方に相談に行き、野菜の出荷や加工場をされている業者さんをご紹介いただきました。
 また、そのつながりで県内の農家さんのところへ一緒に連れて行ったいただいたのですが、畑で廃棄されている野菜が沢山あることに驚きました。廃棄に頭を悩ませる農家さんの声や、畑からでる廃棄の量に大変な驚きを感じ、“それらを集めてクレヨンにしよう”と考えつきました。

―木村さんご自身は、広告関係にお勤め後、『親子で楽しめる時間をデザインする』という理念のもと2012年に起業されましたが、それまでは農業とのつながりはなかったのですか?

170823_おやさいクレヨン(2).jpg 親戚はリンゴ農家なので小さい頃からリンゴ摘みに行ったりはしていましたが、青森県は農業や漁業が盛んな地域なので、どちらかと言えば農業は特別なものではなく当たり前の存在でした。しかし起業するにあたり「青森県の魅力をPRしていきたい」という想いもあったので、青森県の良さである野菜や果物が美味しい・水がきれいといった部分を元にした何かを生み出していきたいという考えになっていきました。
 加えて、起業する前に県内の藍染展へ行ったのですが、自然の色で染めた、機械的でなく数値化されていない色の奥深や美しさに感銘を受けました。もともと絵を描くことや文房具が好きだったので、藍染の青が自然の色であるなら、野菜や果物の色で絵を描く道具や文房具を作れたらいいなとも思っていました。

―様々なきっかけから実現した商品なのですね。実際に農家さんとも接する機会があるとのことですが、農家さんと直接取引をされることもあるのですか?

 今は県内の農家さん5軒から各2〜3種類ずつ野菜を提供してもらい、全部で10色のクレヨンを製造・販売しています。農家さんにはわざわざ捨てるところを乾燥・保存してもらう手間がかかるので、微々たる売り上げだとは思うのですが買い取りをさせて頂いております。
 原料をトータルしても、現状では廃棄野菜の削減を解消するほどの量を使用できていないところが非常に残念ではあるのですが、少しずついろんな商品を増やしていけばと思っていますし、先ほどのカシスのように、あまり知られていない青森県の農産物の魅力についてもクレヨンを通して発信していきたいと考えています。

―実際に“おやさいクレヨン”を使用されいてる方の声を教えてください!

 子供たちは“これ食べられるの?”とか“なんで野菜がクレヨンになってるの?”とか、単に絵を描くだけじゃなくて興味をもって使ってくれています(※注意:おやさいクレヨンは口に入れても安全ですが食べられません)。あと稀に、時期にもよりますが、ネギなど香りの強いものはクレヨンに香りが残っていることもありますよ。クレヨンのできた背景や、野菜がどこからきたか、という話を家族でしながら、自然に食べ物に関して考えてもらう時間になれば、食育の一環にもなるかなと思います。
 こんな風に、ものの良さをよりよく伝えて、それをユーザーさんが受け取って、何か幸福になったり、ためになったり、そうゆうふうに伝わってる様子が見えた時に、ものづくりの喜びややりがいを感じますね。“おやさいクレヨン”は値段は決して安くありませんが、「安心して使えるものを使いたいのでこうゆう商品があってよかった」という声は多く耳にします。おじいちゃん・おばあちゃんがお孫さんにギフトで贈ったり、ご友人の出産祝いといったプレゼントとして使われる方も多くいらっしゃいます。廃棄野菜が“おやさいクレヨン”になり、様々な家庭で使われていることを知ったときはとても嬉しいですし、自分が作ったものがそうゆう風に使われていることはすごく不思議でもあります。会社の理念は「親子で楽しめる時間をデザインする」ですが、今後も心に残るものづくりをしていきたいと考えています。

―この事業を始めて、木村さんご自身も農業や野菜に対する意識は変わりましたか?

 変わりましたね。小さい頃から身近にあった農業ですが、農家さんがどのような方かというのは存じ上げませんでした。しかし事業を通し、いろんな方にお会いして作物に対する思いを伺っていると、「こんなにたくさんの手間暇と心を込めて作っているものを、いつもいただいているんだな」と思えるようになりました。なんと言いますか、農家さんの顔や想いが見えてくるとスーパーに並んでいる農産物も違ったものに見えてくるような、、、そういう感覚もすごく大事なことだと感じています。

―農業とデザインは一見関係のない分野にも思えますが、お話を伺い、融合することで両方の魅力が増していくと感じました。

 「農業×デザイン」が生み出す可能性はとても大きいと思います。すごく美味しくて品質も確かな農作物が出来上がったときに、それを伝えることを補助する役割がやはりデザイン力だと感じています。農業とデザインが融合することで地域の良さも伝えられると思いますし、それまで埋もれいてた商品の魅力も見いだせると思います。そうすることで価値やお金の循環が生まれ、結果的に農家さんにも還元できれば理想的です。

―最後に、「農業×デザイン」に興味のある学生に一言お願いします!
 私は、好きなことを仕事にすることは幸せなことだと思っています。もちろん辛いこともあるかと思いますが、やりがいもありますし、挑戦してほしいと思います。そして新しい農業スタイルを発信し、若い力で農業のイメージをどんどん変えていってほしいなと思います。


170823_おやさいクレヨン(3).jpg*取材はスカイプにて実施いたしました。
*写真は木村様よりご提供いただきました。




※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
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2017年06月30日

「ホップが変える、地域と日本農業」 キリン株式会社 

「ホップが日本の農業に与える影響はとても大きい。産地や農業者との関わりを通じて、そう思うようになりました」。そう話すのは、キリン株式会社 CSV戦略部 浅井さん。今回はホップの一大産地である岩手県遠野市と同社が進めるまちづくりプロジェクト「TONO BEER EXPERIENCE」について、浅井さんと同部署の四居さんにお話を伺いました。

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△四居さん(左) と 浅井さん(右)

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」39号/2017年夏号より転載)

ホップが変える、地域と日本農業。

―ホップはビール原料の一つなんですね。
 そうです。ホップはビールの香りを決める重要な原料です。当社では日本で生産されるホップの約70%を使用しており、遠野市とは54年前から契約栽培をしています。日本産ホップは生産量が少ないのですが、輸入品と違いフレッシュですし、醸造家からは「日本らしい香りがする」と高評価をいただいています。何より、日本産ホップの可能性はとても高いと感じています。

―そのご縁から、遠野のまちづくりプロジェクト「TONO BEER EXPERIENCE」が始まったのですか?
 実はそれより前から、遠野市との地域活性の取組みは始まっていました。具体的には、平成19年から始めた「TK(遠野×キリン)プロジェクト」という取組みで、遠野市の宝であるホップやそのビールにあう遠野産の様々な食材をPRするというものです。
 その次のステージが「TONO BEER EXPERIENCE」です。これは、地域活性化を目指す遠野市が、地元の資源であるホップの魅力を最大限に活用して未来のまちづくりに取り組むというもので、「ホップの里」から「ビールの里」へ≠テーマに活動しています。現地へ赴くことも多いですよ。

―実際に現地の方々と接する中で、どのようなことが課題だと感じていますか?
 一番の課題は担い手不足ですね。遠野市では、約40年前には239戸あったホップ農家が、現在では35戸にまで減少しました。これは我々の予測をはるかに超えるスピードです。

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△ ホップは多年草のつる性植物で、高さは10メートル前後まで生長します。

 しかし、ある出来事が一気に事態を変えました。2008年に神奈川県から移住し新規就農された吉田さんの存在です。吉田さんは自社農園「遠野アサヒ農園」にて、季節の野菜やスペインで親しまれているビールのおつまみ野菜「パドロン」を中心に生産されており、様々な縁で当社と繋がりました。2015年からはホップ栽培もされています。吉田さんのように、遠野で新規就農した若者が地域の資源であるホップを紡いでいく動きは、地域にとっても当社にとっても、非常に大きな刺激になっています。

 また、吉田さんがホップ生産を始めるタイミングで、東京で開催された「新・農業人フェア」という就農希望者のための合同説明会に出展しました。その時は、遠野市役所の方、ホップ農協の方、吉田さん、当社から浅井が参加しました。ブースへ来た方には「お願いだからホップ農家になってください」という話はせず、「僕たちはビールの里に向かってます。その一員になってください」という話をすると、新規就農者が集まったんです! よくよく考えたら、農業の「川上」から「川下」に関わる人物が全員集まっていたことや、「生産したホップはキリンが100%買い取ります」という販路の確保、住居など生活面のアドバイスがなされたこと、そして何より、コミュニティへ 入ってすぐに友達ができるという環境があったことが大きかったようです。結果論ですが、地域農業を活性させていく上では、その場所にしかない資源を活用したり、農業の未来を見据えたまちづくりやグランドデザインの筋が通っていることが重要だと感じました。

―最後に、学生に一言お願いします!
(四居さん)
 実はこの担当になるまで、「農業は辛くて大変な仕事だ」と思っていました。しかし今は、すごく夢がある仕事だと思っています。農業は農産物の生産だけでなく、地域活性化に携わったり、農業を基幹産業とする地域のプロ デュースまでできる、チャンスの多い業界だと思います。

(浅井さん)
 「ビールの里」が自他共に認められるブランドになった時、遠野の農業自体の付加価値をあげられるのではないかと思っています。農業を軸にした地域活性をしたい方にも、就農を目指している方にも、「ビールの里をつくる仲間になりませんか!?」と言いたいですね。ホップはもっと面白くなりますよ!

公式サイト

キリンが応援する遠野のまちづくり 「TONO BEER EXPERIENCE」
⇒ http://www.kirin.co.jp/csv/connection/tonobeerexperience/



※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
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