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2017年09月30日

「品種改良の最前線!最後の決め手はベロメーター」 農研機構 別所さん

農業・食品産業技術総合研究機構 品種育成研究領域長 別所さん

voice40_6p_01.jpg農業を支える品種改良等の技術について、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(以後、農研機構)果樹茶業研究部門 品種育成研究領域長 別所さん(右写真)にお話を伺いました。

(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」40号/2017年秋号より転載)

品種改良の最前線!最後の決め手はベロメーター

―まず、貴機構について教えてください。
 当機構はさまざまな作物から畜産、農業機械、食品、環境など農業や食に関わる幅広い分野について取り組む国立の研究機関です。
 その中で、ここ果樹茶業研究部門 品種育成領域では、ナシやクリ、核果類(モモなど真ん中に大きな種子がある果実)の育種や、育種技術の開発、遺伝資源の解析や収集・保存等を行っています。
voice40_6p_02.jpg 核果類の育種ですと、例えば最近発表したモモの品種「さくひめ」(右写真)は、温暖化対策の一つとして開発された品種です。モモが花を咲かせ実をつけるには一定量の低温が必要ですが、温暖化が進行し冬の低温量が少ないと芽の出方が悪かったり正常に花が咲かないことがあります。そこで、ブラジルのモモと日本のモモをかけあわせて、低温要求量が少なく、かつ味の良い品種を開発しました。

―開発にはどのくらいかかりましたか?
 「さくひめ」は三世代で約22年かかりました。果樹は交雑をして品種登録の出願をするまでに最短でも一世代15〜20年程はかかるので、早い方だと思います。

―ずいぶん時間がかかるのですね!
 樹が育って花が咲いて実がついて、それを選抜して交雑して育てて、という繰り返しですからね。私の専門はリンゴですが、開発に関わった「ふじ」は23年かかりました。余談ですが、最終的に選抜する判断材料は人間の舌です。育種家の勘というか、ベロメーターというか(笑)。 リンゴの育種をしていた時は1日約200個は食べていましたよ。

―なかなかハードですね!選抜された実が実際に品種登録されるまではどのような流れがあるのでしょうか?
 有望系統を選抜した後、「系統適応性検定試験」といって都道府県の試験場で栽培試験をしてもらい、高い評価を得たものが品種登録されます。最終的に品種登録されるのは、例えばナシだと1000個体から1個体くらいですね。

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△ナシ畑。幼木から成木まで植わっている。

―気が遠くなりますね…その分、品種が広まると喜びも大きそうですね!
 そうですね、やはり皆さんにご利用いただいて「あの品種いいね」という話を聞いた時は嬉しいですね。農業経営で価値のある品種を「経済品種」と言い、1%のシェアを取ることも大変ですが、「ふじ」は約50%を占めています。力のある品種が出ると産地も活性化するので、これからも今までにない経済品種の開発に取り組んでいきたいと思います。

―まさに縁の下の力持ちですね!ところで、品種を発表したあとは現場任せなのですか?
 出して終わり、ではないですよ。品種の普及拡大に伴い試験段階では出てこなかった生理障害などが出てくるので、その都度どういった対策が必要なのかを都道府県の試験場の担当者と一緒に検討したり、新たな研究プロジェクトを立ち上げる場合もあります。メジャーな品種ほど農業への影響も大きいですし、アフターフォローも重要です。

―農家さんと接する事もありますか?
 よくありますよ。生産者大会や研修会等で講師として呼ばれることもありますし、農家さんが当機構へ視察に来られる場合もあります。お付き合いのある農家さんとは「あの品種はどうですか?」など情報交換をすることもあります。

―フランクですね!研究者の方はずっと研究室にこもっているイメージでした。
 所属ユニットによって異なりますが、育種は調査を含め半分以上が畑仕事ですね。春先は苗を植え、冬場は寒いなか剪定作業をし…半分農家です(笑)。昔は畑仕事の方が多かったのですが、今の若手研究者は早いうちから論文も書かねばならず、畑仕事と論文の両立が求められるので少しジレンマがあるかもしれません。

―具体的な仕事内容まで教えていただきありがとうございました。最後に学生に一言お願いします!
 「現場」を見てください。実際に現場を見ると、考えている世界じゃないかもしれないし、より良いイメージを持たれるかもしれない。当機構もインターンシップ制度がありますし、そのような色々な機会を活用して現場を見てほしいですね。

公式サイト

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)
⇒ http://www.naro.affrc.go.jp/



※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
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「目指せ、販路開拓!」株式会社アグリスリー 広報・営業担当 三宅輝明

目指せ、販路開拓!

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(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」40号/2017年秋号より転載)

プロフィール

氏名 三宅 輝明(21)
出身 福島県郡山市
略歴 神田外語学院 国際ビジネスキャリア課を卒業後、千葉県にある農業法人、株式会社アグリスリーへこの4月に入社。「農業を営業や広報の面で支えていきたい」という想いのもと、日々勉強を重ねながら仕事に精を出している。

目指せ、販路開拓!

―三宅さんは英語やマーケティングを学ぶ専門学校を卒業され、この4月に入社されたと伺いました。入社のきっかけを教えてください。
 まず、学生時代に東京で一人暮らしをしている時に「果物が高い!買えない!」と思い、「なんでこんなに高いんだろう。そもそも農家さんってどんな仕事をしているんだろう」と思ったことが農業に関心を持ったきっかけです。
 そこで「とりあえず農業に触れてみよう」と思い、農業や食にまつわるセミナーに参加したり、セミナーで出会った農家さんのところへ実習や視察へ行ったり、他大の農業サークルに入って農作業をするなど様々な活動をしました。そしてある農業イベントに参加した時に当社の存在を知りました。
 当社は千葉県にある農業法人で、梨、米、野菜の生産を中心に、直売、加工、観光農園など幅広い事業に取組んでいます。WEBサイトを見るとデザインもきれいで、他の農家さんにはないインパクトがあってすごく魅かれました。僕は農業の中でも流通や広報、営業に興味があるのですが、「広報・営業」で採用していただけることになり入社を決めました。

―今はどのような仕事をされていますか?
 広報では当社の情報発信や窓口として、観光農園の対応や取材対応、facebook等での情報発信、また今年9月には「コミュニティ CAFE&農家のキッチンLABO FARM TO…」がオープンしたので、プレスリリースの作成・発行といったメディア対応をしました。
 営業は商品の販路開拓が中心で、マルシェでの販売等をしています。

―広報の難しさや楽しさを教えてください。
 難しい点は、自分がよく知らないと相手に伝えられない点ですね。例えば梨園だと、品種や肥料、専門的な栽培技術など、生産に関わることが分かっていないと相手に伝えられないので「やはり生産の勉強は大事だな」と感じることがよくあります。繁忙期には生産にも携わっているのですが、分からないことがあれば生産部のスタッフに「これは何ですか?」「この道具はどう使うの?」など「なんで?なんで?」と聞いています。余談ですが、スタッフはみんな非農家出身で、初めて来たときのことも分かるので優しく教えてくれます。良い人ばかりで本当に感謝しています。
 そうして得た知識が相手に伝わった時は嬉しいですね。特に専門用語が入ると一般の方は分からないので、それを簡単な言葉に変えてしっかり伝わった時はより嬉しく思います。

―具体的な事例を教えていただけますか?
 例えば梨の樹だと、「当社は4本主枝でなく2本主枝で栽培をしています。そのため樹勢が強くなってしまい根元が暴れてしまうので、根元に『かおり梨』を接ぎ木するなどして樹勢を調整する工夫をしています」という説明をしても、一般の方は「ん?」となってしまうので、非農家ならではの目線で、子どもでもわかるような説明をするように心がけています。農作業をしているときも「これをどういう言葉に変えたら相手にわかりやすく伝わるだろうか?どう説明すれば感動的に映るだろうか?」と考えています。

―最後に、今後の目標を教えてください! 
 一番取り組みたいことは営業での販路開拓です。加工場も新設され商品開発もどんどん進むと思うので、今ある加工品やお米などとも合わせて販路開拓を進めていきたいと思っています。ただ、生産面も含め商品について分かっていないと売込みもできないので、今はその辺を勉強中です。例えるなら、シェフになるための下積みとしてホールをやっていると言ったところでしょうか。「果物が高い!」と思った初心も忘れずに、専門学校で学んだマーケティング力やデザイン力を駆使して、流通の見直しや販路開拓進めていきたいですね!

一問一答

Q 趣味は?
A ダイビング。海が好きです!

Q 好きな言葉は?
A 「楽しさを徹底的に追求し、1日も欠かさず自分を変えていくこと」です。自分なりに色々考えながら、思いついたことをどんどん試して、楽しみを見出していきたいですね。とにかく昨日とは違う自分になっていたいんです。

Q どんな就活をしていましたか?
A いわゆる「就活」はしていなかったですね。ネット検索で会社を探して、数打ち当たる戦法で就職先を決めるというのが性に合わなくて。実際に見て体感して一番しっくりくるところに決めたいと思っていたので、全国の農家さんをとことん回っていました。当社に入社を決めたのは卒業直前2年生の1月中旬頃です。あまり焦らないタイプとはいえ、就活としてはだいぶ遅いですよね。

Q 好きな農機具は?
A 「コロコロ君」。マルチに穴をあける時に使う道具です。「なんて画期的な道具なんだ!」って驚きました。ほかにも、カボチャを磨く「ピカ1くん」も好きです。

Q 好きな農作業の瞬間は?
A トマトの芽かき。無心になれるところが良いですね。

Q 好きな異性のタイプは?
A 柴咲コウ。きりっとした感じの顔が好きです。かつ、一歩引いてくれる昭和な女性がタイプです。




※記載情報は取材当時のものです。
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2017年08月30日

廃棄野菜がクレヨンに!?デザインと農業の融合

“廃棄野菜からクレヨンができる!?”
これまで農業について学んできた中でも初めて聞いた話に興味を持った私は、“おやさいクレヨン”についてもっと知りたいと思い、製造・販売されている mizuiro株式会社 代表 木村尚子さんに、起業のきっかけから“おやさいクレヨン”の製作過程、今後の目標についてお話を伺いました。
(取材:2017/7/6、記者・堀内|掲載:2017/8/30)


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―廃棄野菜というと、形が曲がっている、大きさが小さすぎるなど、規格外の野菜をイメージしますが、実際にはどういったものを使用されているのですか?

 原料の多くは、加工場から出る野菜クズを使用しています。例えば、原料の一つに長芋がありますが、青森県は長芋の産地であり、とろろ製造等の加工場はほぼ一年中稼働しています。そこでは皮の部分が毎日約1トンも出るそうなのですが、通常それらは産業廃棄物として費用をかけて処分しています。そのようにお金をかけて廃棄される皮をパウダーにしてクレヨンの原料にしています。
 長芋以外にも、ごぼう茶の出がらしや、カシスジュースの絞りかすなども使用してます。実は青森県はカシスの生産量が日本一なんですよ!

―そうなのですね!青森県はリンゴのイメージが強いのですが、カシスも日本一とは知りませんでした…。加えて、原料となる廃棄野菜は農場から出るものを使用されていると思っていましたので驚きました。

 最初は県の方に相談に行き、野菜の出荷や加工場をされている業者さんをご紹介いただきました。
 また、そのつながりで県内の農家さんのところへ一緒に連れて行ったいただいたのですが、畑で廃棄されている野菜が沢山あることに驚きました。廃棄に頭を悩ませる農家さんの声や、畑からでる廃棄の量に大変な驚きを感じ、“それらを集めてクレヨンにしよう”と考えつきました。

―木村さんご自身は、広告関係にお勤め後、『親子で楽しめる時間をデザインする』という理念のもと2012年に起業されましたが、それまでは農業とのつながりはなかったのですか?

170823_おやさいクレヨン(2).jpg 親戚はリンゴ農家なので小さい頃からリンゴ摘みに行ったりはしていましたが、青森県は農業や漁業が盛んな地域なので、どちらかと言えば農業は特別なものではなく当たり前の存在でした。しかし起業するにあたり「青森県の魅力をPRしていきたい」という想いもあったので、青森県の良さである野菜や果物が美味しい・水がきれいといった部分を元にした何かを生み出していきたいという考えになっていきました。
 加えて、起業する前に県内の藍染展へ行ったのですが、自然の色で染めた、機械的でなく数値化されていない色の奥深や美しさに感銘を受けました。もともと絵を描くことや文房具が好きだったので、藍染の青が自然の色であるなら、野菜や果物の色で絵を描く道具や文房具を作れたらいいなとも思っていました。

―様々なきっかけから実現した商品なのですね。実際に農家さんとも接する機会があるとのことですが、農家さんと直接取引をされることもあるのですか?

 今は県内の農家さん5軒から各2〜3種類ずつ野菜を提供してもらい、全部で10色のクレヨンを製造・販売しています。農家さんにはわざわざ捨てるところを乾燥・保存してもらう手間がかかるので、微々たる売り上げだとは思うのですが買い取りをさせて頂いております。
 原料をトータルしても、現状では廃棄野菜の削減を解消するほどの量を使用できていないところが非常に残念ではあるのですが、少しずついろんな商品を増やしていけばと思っていますし、先ほどのカシスのように、あまり知られていない青森県の農産物の魅力についてもクレヨンを通して発信していきたいと考えています。

―実際に“おやさいクレヨン”を使用されいてる方の声を教えてください!

 子供たちは“これ食べられるの?”とか“なんで野菜がクレヨンになってるの?”とか、単に絵を描くだけじゃなくて興味をもって使ってくれています(※注意:おやさいクレヨンは口に入れても安全ですが食べられません)。あと稀に、時期にもよりますが、ネギなど香りの強いものはクレヨンに香りが残っていることもありますよ。クレヨンのできた背景や、野菜がどこからきたか、という話を家族でしながら、自然に食べ物に関して考えてもらう時間になれば、食育の一環にもなるかなと思います。
 こんな風に、ものの良さをよりよく伝えて、それをユーザーさんが受け取って、何か幸福になったり、ためになったり、そうゆうふうに伝わってる様子が見えた時に、ものづくりの喜びややりがいを感じますね。“おやさいクレヨン”は値段は決して安くありませんが、「安心して使えるものを使いたいのでこうゆう商品があってよかった」という声は多く耳にします。おじいちゃん・おばあちゃんがお孫さんにギフトで贈ったり、ご友人の出産祝いといったプレゼントとして使われる方も多くいらっしゃいます。廃棄野菜が“おやさいクレヨン”になり、様々な家庭で使われていることを知ったときはとても嬉しいですし、自分が作ったものがそうゆう風に使われていることはすごく不思議でもあります。会社の理念は「親子で楽しめる時間をデザインする」ですが、今後も心に残るものづくりをしていきたいと考えています。

―この事業を始めて、木村さんご自身も農業や野菜に対する意識は変わりましたか?

 変わりましたね。小さい頃から身近にあった農業ですが、農家さんがどのような方かというのは存じ上げませんでした。しかし事業を通し、いろんな方にお会いして作物に対する思いを伺っていると、「こんなにたくさんの手間暇と心を込めて作っているものを、いつもいただいているんだな」と思えるようになりました。なんと言いますか、農家さんの顔や想いが見えてくるとスーパーに並んでいる農産物も違ったものに見えてくるような、、、そういう感覚もすごく大事なことだと感じています。

―農業とデザインは一見関係のない分野にも思えますが、お話を伺い、融合することで両方の魅力が増していくと感じました。

 「農業×デザイン」が生み出す可能性はとても大きいと思います。すごく美味しくて品質も確かな農作物が出来上がったときに、それを伝えることを補助する役割がやはりデザイン力だと感じています。農業とデザインが融合することで地域の良さも伝えられると思いますし、それまで埋もれいてた商品の魅力も見いだせると思います。そうすることで価値やお金の循環が生まれ、結果的に農家さんにも還元できれば理想的です。

―最後に、「農業×デザイン」に興味のある学生に一言お願いします!
 私は、好きなことを仕事にすることは幸せなことだと思っています。もちろん辛いこともあるかと思いますが、やりがいもありますし、挑戦してほしいと思います。そして新しい農業スタイルを発信し、若い力で農業のイメージをどんどん変えていってほしいなと思います。


170823_おやさいクレヨン(3).jpg*取材はスカイプにて実施いたしました。
*写真は木村様よりご提供いただきました。




※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
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2017年06月30日

都市農業のパイオニアに聞く! 農業体験農園の魅力と役割

近年、都市住民が身近に始められる農業が注目されています。
今回は、平成8年に全国で初めて農業体験農園(※)「緑と農の体験塾」を開園された都市農業のパイオニア・加藤農園 園主 加藤義松さん(東京都練馬区)にお話を伺いました。

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(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」39号/2017年夏号より転載)

農業体験農園の魅力と役割

―現在は様々な体験農園が開設されていますが、その原型を作ったのは加藤さんだと知りました。なぜ始められたのですか?
voice39_加藤農園_加藤さん2.jpg きっかけは大きく2つありますが、ここ20〜30年で都市農業の環境も随分変わったので、当時の状況も含めお話します。
 まず1つ目は、「地域の方々に農業を理解してもらう取り組みをしないと宅地化してしまう」と危機感を持ったからです。私が小さい頃、この地域は田畑が広がっていましたが、高度経済成長期の波がきて、昭和43年には新都市計画法ができました。この法律は簡単に言うと「都市の農地は10年以内に宅地化しないさい」というものですが、この地域も指定区域に入り、周りの畑はどんどん住宅に変わっていきました。加えて、マスコミはじめ世論は「農家が農地を手放さないから地価が高いんだ。宅地化しろ」と風当たりが強かったんです。だからこそ、農業への理解者を増やしたいと思いました。
 もう1つは、「農業は人に感動を与えることができる!」と衝撃を受けたからです。私の娘が小学生の頃、PTAから「収穫体験をさせてほしい」との申し出があり、親子70〜80名がいろいろな野菜を収穫しました。野菜のなかに里芋もあったのですが、掘り上げたとき大歓声が上がったんですよね。それを見て、「同じ農業をするなら、こういう仕事をしたい」と思いました。
 これをきっかけに体験農園の構想ができました。このアイディアを友人の白石好孝(白石農園・東京都練馬区)に話したら乗ってくれて、実現へ向けて進んでいきました。

―開園されるまで、どのような苦労がありましたか?
 一番の問題は法律上の問題でした。資料を作り練馬区に持って行ったところ「農地法の関係で非常に難しい」と言われましたが、区の担当者も興味を持ってくれました。この体験農園の仕組みは、行政にとっても利点のある取組みだったからです。

―なぜですか?
 昔から行政管轄の市民農園はあったのですが、利用者同士のトラブルや周辺住民からのクレームなど様々な問題を抱えていました。それを農家が自ら解決してくれるなら行政としてはありがたいですよね。加えて、農業経営にもプラスになる仕組みなので、どうにか実現できないものかと交渉を繰り返し、4年かけて開園にこぎつけました。

―4年ですか!やはり最初は大変だったのですね…。開園から20年以上経ちますが、今の利用状況を教えていただけますか?
 1区画が30平米あり、全部で153区画ありますが、全て埋まっています。契約は1年間で、5年間更新できます。利用者の利点は、野菜を短期間でプロ並みに作れるようになること。しかも、農具や種苗は園主が提供するので手ぶらで参加できますし、1年を通して自分で作った新鮮な野菜を食べられます。利用者の9割は練馬区民で、畑からすぐ近くに住む方も利用されていますよ。

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(写真)左:利用者の質問に丁寧に対応する加藤さん / 中央下:区画ごとに立札が立てられている。
    中央上:畑の周囲は住宅に囲まれている。 / 右:自転車で来られる方も多い。

―利用者の中には頻繁に来られない方もいると思いますが、その場合は加藤さんが野菜の管理をされるのですか?
 私は一切面倒は見ません。なぜなら、失敗も必要だからです。たとえ管理が悪くて枯れたとしても「悪い例」として勉強できるじゃないですか。それもいいことだと思います。
 また、畑の管理は個人の問題ではなく、畑全体の問題になることは、皆さんも意識されていると思います。例えば管理が悪くて害虫が発生すれば、そこからほかの利用者の区画に広がる可能性もありますが、そうならないよう気遣う心も生まれてきます。
 体験農園の大きな特徴は、こうしたコミュニティーが発達することだと感じています。

―コミュニティーですか?
 そうです。畑の中だけでなく、近隣住民との新しいコミュニティーもこの農園を中心に生まれました。例えば、炊き出し訓練。当農園では年に2回ほど収穫祭をするので大きな寸胴やコンロがありますが、もし震災があったときには、それらを使って炊き出しができますよね。それもあり、近隣の町会と連携して炊き出し訓練をしましたが、その時は300人ぐらい参加しました。
 近年、都市農業は価値や役割が大きく変わり、地域の役割をも担うようになりました。だからこそ、近隣住民にとって、なくてはならない存在になることが重要なんです。

―加藤さんは、都市農業をどのようなものだと考えられていますか?
 とても透明性のあるものだと思います。周りが消費者という中で農業をしていますから。「地域の人たちが近くの畑の野菜を食べて、その野菜についてもっと知りたくなる。その情報を農家が出していく」というような地域密着型の農業が全国で広まれば、日本全体で農業への理解も深まると思いますし、都市農業にはその使命があると思います。
 それに、都市の中に農地があるのは、かつて都市計画に失敗して混在してしまったという経緯はありますが、先進国ではかなり珍しく、2019年にはここ練馬区で「世界都市農業サミット」が開催される予定です。都市農業は日本農業をコマーシャルする最前線基地にも成りえると思います。

―最後に学生に一言お願いします!
 日本の農産物は、世界の中でもナンバーワンだと思います。だからこそ、日本の農産物に自信をもってほしいし、地域でつくられる野菜をもっと食べてほしいですね。

就農のきっかけ&やりがい

voice_12p04.jpgQ.就農のきっかけを教えてください。
A.当時、農業をすると社会から取り残されるようなイメージがあり、「農家にだけはなるまい。絶対に継がない」と思っていましたが、母が早くに亡くなり、けっこうな面積を一人で耕す父の姿を見て「やらないといけないな」と思い、26歳のときに仕事を辞めて就農しました。一大決心でしたよ。

Q.農業にやりがいを感じるようになったのはいつ頃からですか?
A.30歳で直売を始めてからですね。それまでは外にテーブルを出してちょこちょこ販売していましたが、そこそこ売れたので、「大きくやっても売れるかも」と思い、畑の近くに物置小屋を建てて始めました。当時は市場出荷が当たり前で農家直売が珍しかったこともあり、大繁盛しましたね。朝9時の開店時にはすでにお客さんがいて、商品がなくなれば畑に走って採ってきて売るという感じで、ずーっと走り回っていました。「お客さんに評価されて、感謝されて、かつ収益も上がるのが理想的な良い仕事だな」と実感しました。
 体験農園でも利用者に感激してもらえると嬉しいですし、利用者のなかには大手企業で働いていた方などもいて、こちらが勉強させてもらうことも沢山あります。開園当時は、利用者から「加藤さんのやってることは社会的にすごく価値がある。頑張れよ」と励まされたことも自信につながりましたね。

(※)農業体験農園

 農業者が「経営の一環として消費者参加型の農業」(*)を行うこと。
 行政等が主導する市民農園や民間企業等が提供する体験農園と異なり、農業者が営農の一部を消費者に提供し、消費者と共に農作業を行う点が大きな特徴です。
 「農業体験農園」は、あくまで営農の一部であるため、作目や品種、農具、栽培方法などは園主が決定し提供します。利用者は自分の好きなものを勝手に作ることはできませんが、農家から直接指導を受けられたり、高品質な野菜を収穫できるなどの様々な利点があります。この方式は「練馬方式」とも呼ばれ、全国に広まっています。

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△ 必要な農具や種苗、農薬等が準備されている。講習用の掲示板やスペースも完備。

[引用・参考]
・(*)全国農業体験農園協会(http://nouenkyoukai.com/whats.htm)より引用 
・「都市農業必携ガイド」(著:小野淳ほか、発行:農山漁村文化協会)

公式サイト

・農業体験農園「緑と農の体験塾」 ⇒ http://midoritonou.main.jp/



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「食べる」は「命をいただく」こと
菅田 悠介 (慶應義塾大学 環境情報学部 3年)

食料廃棄問題と狩猟に興味をもつ大学生・菅田さんにお話を伺いました!

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(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」39号/2017年夏号より転載)

―菅田さんのブログで、飼っている鶏を解体している様子を見ました。
 「食べ物は命だった」っていう感覚を伝えたくて。鶏が肉になる過程を知ってほしいんです。たしかに解体の様子を写真で見ると「グロい」ってなるんですけど、目の前でさばくと別の感情が生まれるんですよ。
 いま、大学の近くに畑をお借りしています。そこに鶏小屋も作って、9羽飼ってます。その鶏をさばいて食べるイベントもしています。ネットで見る情報だけで判断しないで、実際に触れて、食べることについて考えてほしいんです。

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(左)約1反の畑を耕している / (右)手作りの鶏小屋

―こうした活動を始めたきっかけは?
 大学1年の夏休みに、高校時代から興味を持っていた福岡の猟師さんの元に訪れ、鴨をさばく体験をしたんです。その時の衝撃がすごい大きくて。「その命を自分のものにさせてもらう行為が食べることなんだ」って感じました。それから一切食べ残しもしなくなったんです。「この感覚をほかの人にも伝えたい!」そう思ったのがきっかけです。

―いま、手にコーラをお持ちですが、普段はジャンクなものも食べるのですか?
 食生活は特にみんなと変わらないですよ!普通にファストフードとかも食べますし、いわゆる「どんなお肉かわからない」お肉も買って食べてます。でも、「このお肉は、どこで育って、どうやって解体されたんだろう?」っていう過程は、絶対に考えます。考えて、「いただきます」ってしっかり言って、食べる。どんなお肉でも、命の重さは同じなので。食べることをすごい意識してるから、食べ残すって概念はなくなりましたね。

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(左)菅田君が獲ったイノシシ(狩猟免許あり)/(右)ふいに渡されたイノシシの頭蓋骨にビックリ!

―いま大学3年生ですが、将来はどんな仕事に就きたいと考えていますか?
 理想は、今の活動をみんなに必要だと思ってもらい、それが仕事になるという形ですが、今の活動からどうやって利益を追求していいかわからなくて…そのあたりは、いま大学の授業で学んでいます。たとえそれが難しくても、食料廃棄の分野に関わりたい、というのは決めています。

―今後の展開を教えてください!
 僕がいつも大事にしているのは、「常識を疑う、当たり前を疑う」こと。どんな問題であっても、実際に自分でやってみて、とにかく考えることが第一歩になると思うんです。今の活動も「教える」というよりは、「知るキッカケを生み出したい!」と思っています。

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公式サイト

遠藤部族日記
⇒ http://tayusuga.hatenadiary.jp/



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