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2017年03月30日

「確実に足場を固めて新規就農を」イチゴ農家 松本純佳さん

新規就農者の育成に積極的に取り組んでいる農業法人・あずま産直ねっとを含むいくつかの農業法人等での研修を経て独立就農を果たした松本純佳さん(33)に、就農までの経緯や現在の様子、今後の目標などについて伺いました!
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」37号/2016年冬号より転載)

確実に足場を固めて新規就農を

37号_松本さん.jpg―就農を目指したきっかけを教えてください。
 大学生の頃から「60歳くらいになったら農業しよう」と思っていました。大学卒業後は奨学金の返済もあったので一般企業に就職したのですが、そこは「成果が出なければどんどん切る」という会社で、いわゆるブラック企業ですね、その方針になじめず半年で辞めました。辞める直前に改めて将来を考え直した時に、「60歳と言わず前倒しして農業を始めてみよう」と思いました。
 ただ前職のこともあり、「次の仕事選びは慎重にしたい。本当に自分が農業でやっていけるのか確かめよう」と思い、半年間ほど栃木のイチゴ農家さんでバイトをしました。そこで「これは 面白い。やりがいもある」と思い、本格的に就農を目指しました。とはいえ、奨学金の返済もあるので改めて農業を学ぶ学校へ行くわけにもいかなかったので、「お金をもらいながら勉強しよう」と思い、農業法人への就職を決めました。

―そこで、「あずま産直ねっと」さんに就職されたのですか?
 そうです。たしか「新・農業人フェア」という農業法人の合同就職説明会に参加して、気になった農業法人を3カ所ほどピックアップして、後日実際に訪問して、その上で決めました。

―決め手は何だったのですか?
 私はイチゴでの新規就農を目指していたのですが、ちょうど「あずま産直ねっと」がイチゴを始めるところで、「就職すればイチゴ担当になれる」という点に魅力を感じました。ただ、当たり前ですが、生産技術のない当時の私が担当になることは相当無理がありましたし、会社は多品目生産なのでイチゴ生産以外にも様々な仕事がありました。いろいろ考えた結果、「やはりイチゴに専念したい」と思い、「あずま産直ねっと」で2年間お世話になったあと、茨城県のイチゴの農業法人で1年間、地元のイチゴ農家さんで1年間研修し、その後、独立就農しました。今で就農5年目です。

―独立就農の際、何が大変でしたか?
 農地を借りることですね。研修先の農家さんや農協、農業指導センターなど多くの方のご協力をいただきながら探したのですが、6か月以上はかかりました。例えば、「貸していいよ」と仰っていただいた方のご家族から「あなたには貸せない」と言われたこともありますし、他にも様々な理由をつけて断られました。
 そして今の場所は、有難いことに、使われなくなっていた暖房機、水のあるハウスを農協の交渉で一式借りることができました。

―他の資材はどのように調達されたのですか?
 例えばトラクターは、「あずま産直ねっと」のご縁で格安で譲り受けました。また、新規就農者向けの無利子の融資を受けて運転資金にしました。
 これから新規で農業を始めたい方がいれば、新規で何から何まで揃えたら本当に大変なので、離農される方から譲り受けるのが良いと思います。

―人との繋がりが大切ですね。実際に就農されて、どのような時にやりがいを感じますか?
 良いイチゴができた時に一番やりがいを感じますね。よく近隣のイチゴ農家さんからもアドバイスをいただきます。皆さん師匠ですよ。まだまだうまくいかないことも多いのですが、毎年改善を重ねて納得のいくイチゴを作りたいと思っています。

―今後の目標を教えてください。
 まずは自分の生活を安定させることです。将来的には農業法人にして、私のように「農業をやりたい」という人がいれば積極的に受け入れていきたいと思います。このまま農業者が減ると荒地が増えてしまいますから。

―最後に、新規就農を志す学生に一言お願いします!
 独立就農をするのなら、ステップを踏んで足場を固めてから独立してほしいですね。学校で学んだことと実際の農業経営は異なることが多いので、「学校で学んだから大丈夫」という風に安易に考えない方がいいと思います。少なくとも、農家や農業法人で1年以上働く方が良いと思います。そうすると、お金のかけ方や本当に自分がやりたいことも見えてくると思います。「新規就農者はだめだよね」と言われないためにも、確実にそのステップを踏んでほしいと思います。




※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
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「人情あふれる新規就農者育成」 有限会社あずま産直ねっと

新規就農者の育成に積極的に取り組んでいる有限会社あずま産直ねっと。
経営規模は露地約25ha、ハウス2.5haで、30品目以上の野菜を周年栽培しています。
「仕事の原動力はやっぱり農業が好きってこと」と語る代表取締役社長 松村久子さんにお話を伺いました。
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」37号/2016年冬号より転載))

人情あふれる新規就農者育成

37号_あずま産直ねっと.jpg
△スタッフの皆さんと松村久子社長(前列中央)。夫の松村昭寿社長(後列左から2番目)と共同代表。
 (写真は松村社長よりご提供いただきました)

―新規就農希望者の独立支援を始めたきっかけを教えてください。
 きっかけは約13年前の出来事です。縁があって夫の知り合いの若い男の子をインターンで受け入れたのですが、その子がすごく熱心で「こんな風に農業に向き合う若い子がいるんだ」と感心しました。彼は独立での新規就農を目指し当社でインターンをして、本当に新規就農しました。その彼がとても良い子だったこともあり、その後も研修生を受け入れています。

―なぜ独立支援をされているのですか?
 はじめの研修生が独立志望だったこともあり、「研修生は独立するものだ」と思ったことが大きいですね。加えて、独立思考が強い人ほどモチベーションが高い人が多く、技術や経験を吸収しようと一生懸命になる点も採用の時に魅かれるポイントだと思います。また、夫が若い頃は教師を目指していたこともあり「人を育てたい」という想いもあったのかなと思います。

―研修生を育てる上で、どのような工夫をされていますか?
 どんな仕事でもできるように、土づくり、種まき、育苗、管理、収穫、荷造りと全ての作業に関わってもらっています。
 当社では安全でうまい野菜を届けるために、農薬の使用を極力控えて、健康な土づくりをしています。「群馬県特別栽培農産物認証」も受けていますよ。販路は、こだわり農産物の流通企業や外食産業、スーパー、生協、学校給食など、全て独自ルートです。経営規模は違っても、農家になった時は生産から販売まで全部できなくてはなりませんから、研修中に農業の全ての流れを経験してもらいたいと思っています。農業機械も扱いながら使い方を覚えてもらいます。たまに壊されることもありますが(笑)。

―様々なことが学べそうですね!研修後、実際に独立を希望される方には、どのような支援をされていますか?
 決まった形式ではなく、それぞれの研修生にあわせて出来る限りのことをしています。新規就農の際に最も大切であり、かつ、難しいのは、農地と販路の確保です。当社では出来る限りその支援もしています。例えば、当社の近くで就農するなら、当社の農地を貸したり、土地を借りるのを手伝ったり、当社ルートで販売することも可能です。場合によっては、使わなくなった機械やハウスの部品を無償や格安で渡すこともあります。ただ、研修生の独立先は北海道から九州まで幅広く、全員に手厚い支援をするのは厳しいので、やはりそれまでの研修でしっかり育てることが大切ですね。

―独立就農を目指す方には、どのような心構えで研修に臨んでほしいですか?
 「自分で食料を作って生活していくんだ!」という強い気持ちで臨んでほしいですね。やはり、「憧れだけ」で農業を目指す方や「現実逃避したい」という方には厳しい仕事だと思います。作目にもよりますが、当社のように周年栽培をしていると少人数経営では休みを取るのは難しいですし、自分が野菜のリズムに合わせる必要がありますから。
 ただ、そのあたりも経験してみないと分からないと思うので、まずは農業体験をしてみてください。当社では1週間の短期研修から1年以上の長期研修まで様々な形態で受け入れています。短期・長期を合わせると年間100名くらいは受入れています。学生さんもけっこうきますよ。夏休みなど長期休暇を使って体験するのも一つの手だと思います。

―最後に、新規就農を志す学生に一言お願いします!
 農業は、難しいけど、やりがいのある仕事です。また、気象に左右される仕事でもあり、生き物相手でもあるので、もし初年度がダメだったとしても、長い目でみてチャレンジを続けてほしいですね。

会社概要

【社   名】 有限会社あずま産直ねっと
【事業内容】 野菜の栽培、加工、販売
【所 在 地】 群馬県伊勢崎市田部井町
【サ イ ト】 http://www.azuma-sun.co.jp/
【沿  革】 「農事組合法人あずま産直会」を経て、2003年に「有限会社あずま産直ねっと」を設立。野菜を周年栽培し、独自のルートで販売している。研修生の受け入れにも積極的で、多数の新規就農者を輩出している。



※記載情報は取材当時のものです。
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地域と共に。〜JAあつぎ食農教育プラン 夢未kidsスクール〜

「『食にはこれだけ多くの人が関わっているんだ』ということを知り、農や食を『見極める目』を育ててほしい」。そう仰るのは、JAあつぎ食農教育担当の小池さん。今回は、小学生を対象にした食農教育事業「夢未kidsスクール」にかける想いを伺いました!
(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」37号/2016年冬号より転載)

地域と共に。 JAあつぎ食農教育プラン 夢未kidsスクール

―「夢未kidsスクール」の活動内容を教えてください。
 JAあつぎ管内の小学4〜6年生を対象に、1年間を通して食農教育を行っています(定員32名)。当事業は7年目になりますが、毎年少しずつテーマや内容を変えています。今年は「目指せ!もち米マイスターへの道!」というテーマで、5月の田植えから始まり、稲刈り・販売・もちつきと、栽培から口に入るまでの一連の流れを学べる企画にしました。田んぼ作業以外にも、地域の農家さんの畑を見学させていただいたり、農家さん指導のもと収穫した野菜を使ってメニューを考えて調理したり、厚木市職員の方に当県(厚木市)の農業について教えていただいたり、運営にも関わってくださっている東京農業大学の先生や学生さんから食の大切さを教わったりと、盛りだくさんな内容になりました。

37号_JAあつぎ夢未kids (2).jpg
田植えの様子。田んぼは1反あり、全て手植え・手刈り。

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調理実習の様子。地場の農畜産物でオリジナル料理作り!

―農家さんや大学など、様々な方との関わりがあるのですね。
 当事業では、JA・農家・行政・大学がネットワークを組み「食について自分たちの問題として認識」することを目的の一つとしています。東京農大の先生ならびに学生ボランティアをはじめ、様々な分野の多くの方々からご協力をいただき運営ができていると実感しています。子ども達も毎回様々な「先生」から農や食を教えていただけるので、大変勉強になっているようですよ。

―どのような時に子ども達の成長を感じますか?
 毎回日記を書いてもらうのですが、その日に学んだことを細かく書いてくれるお子様が多く、「こんなところまで学んでくれていたんだ!」と驚かされることがよくありますね。
 また、夏に実施した田んぼの生き物調査では、最初は気が進まずなかなか田んぼに入らなかった子も、気付けばどんどん田んぼに入っていって、自分が植えた稲の状態、田んぼにいる生きものを観察し、田んぼの役割まで学んでいました。秋には、10月に全て手刈りで収穫をしました。そして11月の農業まつりでは「自分たちで作ったお米です」と言って一生懸命販売をしていました。毎年、もち米を販売したお金は復興支援と社会福祉協議会へ寄付をしています。
 今は買えば何でも手に入る時代ですが、農産物ができるまでの大変さを体験してもらうことがすごく大きな学びに繋がると思います。

―今後の目標を教えてください!
 今は小学生が対象ですが、保護者をはじめ様々な方に、地産地消や農業理解を促していきたいですね。

先生と学生に聞く!

37号_JAあつぎ夢未kids (1).jpgこの活動に参加されている東京農業大学農学部の御手洗(みたらい)助教と学部4年生の神辺さんにもお話を伺いました!
(写真 左:御手洗助教、右:神辺さん)

―「夢未kidsスクール」ではどのような関わり方をされていますか?

御手洗助教: 参加者(小学生)同士が仲良くなれるように間を取り持ったり、活動がより楽しくなるようなサポートをしています。また、全10回のプログラムのうち1回は「農大プログラム」といって大学に子ども達が来る回があるので、「大学だからこそ味わえる取組みをしてもらおう」と企画を考え実施しました。

―活動を通して得たことは?

神辺さん: 私はこの活動を卒論のテーマにしています。その一環で毎回同じ内容のアンケートを取っているのですが、参加2年目・3年目の子の方が高い目標を掲げている傾向にあり、農作業によっぽど興味があるのだと思いました。

御手洗助教: 私は、子ども達にもっと農業を知ってもらうにはどうしたらいいかを学ぶ良い機会になっています。この事業は「自分たちの体は食に支えられていて、その食の根源は農である」ということを体現的に学べる事業だと思います。いずれは、調理クズ等を土に還して、循環を含めた一連の流れが学べる活動になればいいなと思っています。






※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
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農業と音楽は一生もの! 高橋農園 代表 高橋雄介

高橋農園 代表 高橋雄介

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(※当社発行の農業フリーペーパー「VOICE」37号/2016年冬号より転載)

プロフィール

氏名 高橋 雄介(37)
出身 埼玉県本庄市
略歴 高校卒業後、スタイリストになる夢を叶えるためにアパレル業界へ進出。夢を達成後、ミュージシャンへ転身。その後、家業へ入り、農業の道へ。現在、「農家兼業ミュージシャン」として農業経営と音楽活動の両方に力を注いでいる。

農業と音楽は一生もの!

―就農のきっかけを教えてください!
 農家のせがれに生まれましたが、小さい頃は農業が嫌いで「農家には絶対ならない!」と思っていました。いろいろあって家業に入ったのは20代半ばなので、もう10年以上前ですね。

―今は「農家兼業ミュージシャン」としても活躍されていますが、もともと音楽やミュージシャンに興味があったのですか?
 そうです。もっと言うと、小学生の頃から「ファッションスタイリストになること」と、「憧れのスタイリストと一緒に仕事をすること」が夢でした。が、ありがたいことに、その両方が 20歳前後で叶いました。叶ったら叶ったで燃え尽きてしまって…その時に「次の夢も叶うだろう!」と考えて、もう一つの憧れだった「ミュージシャン」を目指しました。当時はギターも一切弾けず(笑)、ボイストレーニングにも通っていたのですが、勉強すればするほど音楽は奥が深いことに気付いて、勉強と創作活動とバイトを2〜3年続けていたのですが、あまりうまくいかなくて…そこで、「実家で働きながら創作活動をしよう」と思い、東京から実家へ戻りました。

―ということは、「農業しよう」というより、「ミュージシャンで成功するためのステップ」としてご実家へ戻られたのですか?
 最初はそういう感じでしたね。親にもそう伝えていました。ただ、実際に農業を手伝うにつれて、だんだん楽しくなってきたんですよね。特に7年程前に、父が「これからは珍しいものを作って高く売る方が儲かる時代になるんじゃないか」といって、珍しい品種のミニトマトを生産し始めました。それを見て「じゃあ、それをネットショップで販売してみよう!」と思い直販を始めました。その頃から、父は生産メインに、僕は営業や経理をメインに、という風に分業していきました。今ではそのミニトマトは主力品目になっていますよ。

―経営規模はどれくらいですか?
 ミニトマトがハウスで3反5畝、夏場のナスが2反、深谷ネギが1町5反、コメとムギが3町ずつ、春のキュウリが1反です。
 人員は、僕に続いて家業へ就農した妹2人と社員・パートを合わせて8人。この人数で、生産から出荷・販売までしています。周年雇用なので、常に売り上げを出せるように栽培計画を立てています。

―農業のこだわりを教えてください。
 父の代から「量より質を求める」が基本的なスタイルで、美味しいものを作ることを 一番大事にしています。ただ、僕はまだまだ生産技術がなくて…生産を学ぼうと思った矢先に父が他界しまして。今は妹とスタッフがメインで生産しています。僕も現場に出たいのですが、書類作成などのデスクワークや営業で外に出ることも多いので、なかなか生産に携われなくて…ちょっと不満です!

―今は農業が大好きなんですね!今後はどのように農業と音楽に向き合いたいですか?
 農業と音楽、両方とも研ぎすましていきたいですね。そして、僕がつくる野菜や音楽で 一人でも多くの人に感動してもらいたいと思っています。

―最後に、学生に一言お願いします!
 僕はこれまで選択に迫られたら、「後悔しない道はどっちだろう」と考え選んできました。その時はもちろん悩みます。本当に悩みます。が、悩んでいるだけで行動しなかったら、何も進みませんよね?例えば、目の前に大きな山があるとして、「登れるかな、うーん」と悩んでいても頂上には到達できませんし、登れるかどうかは実際に登ってみないと分かりませんよね。同じように、やりたいことは出来る時にやる方がいいと思います。決断は大胆に!それで大失敗したとしても、後悔しないと思います。そういう道を選んでほしいですね。

<ちょっと気になる一問一答>

Q 趣味は?
A 山登りです。悩んだときに山に登ると「なんてちっぽけで、どうでもいい話なんだろう」と思えて、気分もリセットされます。アパレル系からミュージシャンに転身する時も、山に登って答えを出しました。

Q 座右の銘は?
A ないです!(笑)

Q 好きな農機具は?
A トラクターです。といっても、耕すよりも、道路を走る方が好きです(笑)

Q 好きな農作業の瞬間は?
A ニンジンを抜くとき。すぽっ、て抜けるのがめちゃくちゃ気持ちいいですね!食べるのは…あまり好きではないのですが(苦笑)

Q 好きな異性のタイプは?
A 好きなことに正直に頑張って自立している女性が、僕には合うのかな〜と思います。

Q 農業と音楽を通じて伝えたいことは?
A 「もっと正直に、素直に生きた方がいいんじゃないのかな」ということですね。野菜づくりも音楽も、ウソや建前は全く通用しません。つくる側は自然と素直になるというか、ならざるを得ないですし、それを食べる人も触れる人も、シンプルに生きた方が楽なんじゃないのかな、と思います。



※記載情報は取材当時のものです。
※無断転用・転載・改変を禁止します。引用の際は、当社までご連絡ください。
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2017年01月16日

【農業×海外】タキイブラジル

今回のインタビューテーマは「農業×海外」。
近年のグローバル化に伴って、国内の農業界企業も海外に進出し事業規模を広げています。
その農業界の中で最も川上に位置するのが種苗業界です。国内をはじめ、世界中の人々の食と農の基盤を支えています。今回は、そんな種苗業界のリーディングカンパニーであるタキイ種苗株式会社で海外を舞台に活躍されているタキイブラジルの松下宏美様にお話を伺いました。
(取材:2016/10/09、ブラジル サンパウロ市の飲食店にて、記者・松崎|掲載:2017/1/16)


タキイブラジル松下さん.jpg

―はじめに御社について教えてください。

 当社は今年(2017年)で創業182周年を迎えます。種苗メーカーとして、常に時代のニーズに対応した特性を備える野菜や花のタネを開発してきました。現在では世界約120の国や地域へ商品を販売しています。従業員数は約750人ですので社員同士の顔もほとんどわかり、非常に風通しの良い会社ですね。

―世界中で事業を展開しているとてもグローバルな会社ですね。現在駐在されているタキイブラジルについても教えていただけますか。

 農業大国であるブラジルをはじめ、コロンビア以南の南米での販売を管轄しているのがタキイブラジルです。現在日本人駐在員が2名、現地スタッフを含めると全員で25名が働いています。

―ブラジルだけではなく南米全体を管轄しているのですね。

 そうですね。私もブラジル国内ではなく、エクアドルやコロンビアといったブラジル以外の南米を担当しています。
 メインの業務は、代理店との商談や農家さんへの訪問、そして本社とのやり取りです。中でも、タネの直接の販売先となる各国の代理店とは長い付き合いがあり、各地域の気候風土や食文化にあった商品を推進・販売していただいています。
 代理店へは定期的に訪問し、品種ごとの売り上げを確認します。売り上げが下がっている商品があった場合は、なぜその商品の売り上げが下がっているのか原因を調べ、それに対して「他のメーカーの商品はこういった点が弱いですが、当社のこの商品ならこういった利点があるのでいいですよ」というような具体的な提案をします。常に農家さんの目線で提案することを心がけていますね。ですから自社商品だけではなく、他社商品も含めて幅広い知識が必要です。また、同時に現地の情報収集も行います。先日も玉葱産地訪問のためにエクアドルに行ったのですが、その際に隣にキャベツ畑があったため、現在使用しているタネの種類や栽培方法に関して話を聞き、当社の商品を提案しました。周辺情報も確認し会社に持ち帰り共有しておくことで、いつでも必要な時に活かせるよう準備しています。
 さらに代理店だけではなく実際に農家さんを訪問し、技術的な指導も行います。栽培過程で問題が起こった場合は、原因を突き止め、的確なアドバイスを行うといった具合です。
 ちなみに私は文系出身ということもあり、こういった技術的な指導が必要な場合は農学部出身の現地スタッフと共に出かけています。

―文系出身ですか!どのような経緯で入社されたのでしょうか。

 大学時代にスペイン語を勉強していたので「語学を活かして仕事をしたい」と考えていました。就職活動の際は「海外で働けるかどうか」を軸に、大小問わず商社からメーカーまで幅広く考えていました。特別、農業や種苗にこだわりを持っていたわけではありませんが、実家が兼業農家なので漠然と興味はありました。
 中でも当社は、種苗に関して唯一無二の商品をたくさん扱っています。そういったオンリーワンな商品を世界中に広めたいという想いから当社を志望し、「海外営業職」で採用され入社しました。

―学生の頃から海外で働きたいという強い気持ちがあったのですね。入社直後から海外で活躍されていたのですか。

 私は入社して約10年になりますが、1年目と2年目は日本で農業や仕事の基礎を学びました。

 当社では入社1年目に本社や農場で研修があります。当社は京都府に本社があり、滋賀県に研究農場がありますが、その農場には当社が運営する「タキイ研究農場付属 園芸専門学校」も併設されており、約4ヶ月泊まり込みで学生さんと一緒に勉強します。品種開発を手掛けるブリーダーの講義を聞いたり、実際に畑で管理作業を行いながら、植物生理の基礎について学びました。また、本社研修では、販売用種子の品質を確認する部署や、種子管理〜製品化を行う部署での仕事を通じて、高品質種子の販売に至るまでの過程についても理解を深めます。営業職であっても農業に関する専門知識は必要になってくるので、入社1年間を通じて基礎知識をしっかり身につけます。研修を通して、他部署の人間とも顔見知りになるので、その後も何かあった時に連絡が取りやすくなるというメリットもあります。
 2年目は基本的な輸出業務を通して貿易実務を身につけます。特に輸出業務では、営業担当者とアシスタントがペアになって仕事をしますが、営業担当者はアシスタントの仕事のチェックもするので、アシスタントの仕事を理解する必要があります。それもこの期間に身につけていきます。
 そして、3年目から本格的に海外へ出張できるようになります。

 私も最初のうちは京都本社から出張ベースで海外営業を担当していました。最初は欧米、次にタイとベトナム、その後、結婚出産のため一時お休みをいただき、復帰後はまた欧米を担当していました。その後、2年間の南米担当を経て、昨年(2016年)4月からタキイブラジルに駐在しています。単身赴任ですので、夫と子どもは日本にいます。

―出張ベースから駐在員に変わったことで、仕事にはどのような変化がありましたか。

 出張ベースの時と比べると、より深く現場に入り込める環境で仕事ができるようになりましたね。時差も少なく、距離も近いため、メールや電話でのやり取りがタイムリーにできますし、実際に畑へ行き作物を見られる機会も増えました。駐在だからこそ、仕事の幅もより広がりましたし、チャンスをくれた会社にも感謝しています。何より、理解して背中を押してくれた家族には、本当に感謝しています。
 また、プライベートの過ごし方も変わりました。サンパウロには様々な業界で働く日本人駐在員がたくさんいるので、食事やスポーツを通して駐在員同士の交流が増えましたね。国内では他の業界の人と関わる機会が少ないので、バックグラウンドの異なる人の話を聞けるのはとても楽しいです。

―海外での仕事を通して、どのような時にやりがいを感じますか。

 やはり農家さんに喜んでもらえた時が一番嬉しいですね。自社商品の提案から始まり、収穫まで携わるため、良い作物が収穫できて「ありがとう」と言われると、「この仕事をやっていてよかったな」と思います。そして、出来た作物が世界中の人々に食べてもらっていると考えると、食の根幹を担う、非常にやりがいのある仕事だなと思いますね。
 また、海外で働いていて「面白いな」と感じるのが、様々な部分で各国の特徴を見られる点です。例えば畑の畝(うね)の作り方一つとっても、各国の国民性が見て取れてとても面白いですよ。

―やはり仕事をする上で、やりがいや面白さを感じられるかどうかはとても大切ですね。

 そうですね。仕事をするためにはたくさん勉強しなければいけないことがあります。しかし、興味があれば勉強も続けられますよね。
 これから就職活動をする学生さんには、ぜひ「自分が興味のあることは何か」を考え、自分にマッチしたやりがいや面白さを感じられる会社と出会ってほしいと思います。個人的には、就職活動は業界にこだわらず、様々なところを見た方が良いと思います。いろんな業界の話を聞く機会は就活くらいしかないですからね。ただ、その時期は授業やゼミもあり、本当に忙しいと思います。私も「説明会の予約をしたけど授業でどうしても行けなかった」という経験もあります。「自分のできる範囲で」というのが前提条件ですが、多くの社会人の話を聞くことで、将来自分が働く姿をイメージしやすくなると思いますよ。

―貴重なアドバイスをありがとうございます。最後に種苗業界や御社に興味のある学生に向けて、一言お願いします。

 当社には、日本をはじめとしたアジアではある程度の知名度と実績があります。しかし欧米や南米などではまだ十分とは言えません。よく言えば、守るものはなくて攻めていくだけ。的確なアドバイスをくれる人もたくさんいるので、国内外の農業分野で若い時から積極的にチャレンジしたい方には合っていると思います。もし現時点で英語があまり得意ではなくても、基礎さえできていれば英語を使った業務を通して上達するので大丈夫です。少しでも興味のある方は、ぜひ当社の採用HPもご覧ください!



〜もっとタキイ種苗(株)さんを知ろう!〜

 




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